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【書評】編集者、ライター・月永理絵が読む『映画の感傷』山崎まどか著

『映画の感傷』山崎まどか著
『映画の感傷』山崎まどか著

■「固有の経験」で訴える

 映画について何かを書く。そこには冷静な分析に基づく批評もあれば、観客を扇動するための宣伝文もある。SNSで求められるのは、人々の共感を呼ぶ短文だろう。映画について書かれたエッセーを集めた本書に通底するのは、タイトルにある感傷性。登場人物に寄り添い、彼らの物語に自分のことのように喜び、ときに胸を痛める。ここでは自身の琴線を強く刺激したものこそが最も重視され、好き、嫌いといった感情的な言葉が衒(てら)いなく使われる。

 恋愛映画や学園映画の紹介に定評のある著者らしく、中心となるのはやはりこの2ジャンル。主に2010年代以降の外国映画を対象に、公開時に発表された映画評やエッセーが収録されている。一方で「名画座日記」という章もあり、扱う作品は案外幅広い。若尾文子主演「最高殊勲夫人」、三島由紀夫原作「肉体の学校」などの旧作邦画がロマンチック・コメディーやファッション映画として紹介される。その意外性が楽しい。

 著者の視線は常に女性たちに向けられ、文体はときに少女たちと同化する。グレタ・ガーウィグやレナ・ダナムなど新たな女性クリエイターの登場を喝采し、若手スターのティモシー・シャラメやエル・ファニングに10代の女の子のように熱狂する。ただし、今の若者たちを魅了する映画の裏に過去の名作たちがあることも忘れない。なかでも「すてきな片想い」「ブレックファスト・クラブ」といった学園映画の始祖ジョン・ヒューズ監督への尊敬の念が各所に滲む。80年代、ヒューズによって学園映画という新ジャンルが誕生する瞬間を目撃した個人的経験が大きいのだろう。

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