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【編集者のおすすめ】『あの日を刻むマイク ラジオと歩んだ九十年』武井照子著

 ■女性の目に映った激動の日本

 昭和20年8月14日。NHKラジオのアナウンサーだった著者の武井照子さんは、女子アナウンサーだけ集められた部屋で、こう上司から告げられたそうです。

 「明日、日本は負けます。反乱軍がきて『この原稿を読め』などと言われても逆らわないこと。まず自分の身を最優先に考えなさい」

 お国のために死ぬ、という考えが当たり前のように共有されていたときに、危険思想の主として捕らえられてもおかしくない、こんなやり取りがあったと聞いた瞬間、私は「絶対に本にしたい。後世までこのことを残したい」と強く思いました。

 書きましょう。武井さんにそうお伝えしてから実に4年。こちらの勝手なリクエストに粘り強く付き合って何度も改稿を重ねてくださった武井さんは、94歳になられました。本書には、激動の時代を生きた一人の女性の目に映った日本の姿がつづられています。物も心も豊かだった戦前から、先の大戦を経て、戦後、高度経済成長期、そして平成の時代。

 家庭と職場を両立させながら、ラジオアナウンサーとして、ディレクターとして、女性として、母として、世の中の変化を見続けた彼女にしか語れない言葉があります。

 さまざまな著名人との出会いやエピソードを交えつつ、優しい文体で描かれる武井さんの人生は、まさにラジオの歴史とともにあり、時を超えて私たちに“本当に大切なものは何か”を教えてくれている気がします。(集英社・1700円+税)

 集英社文芸編集部 飛鳥壮太

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