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【THE INTERVIEW】作家・万城目学さん「べらぼうくん」 雌伏の青春、暗くても彩り

苦しい年月をつづった文章にもユーモアが息づく。「自分のことを語るのが恥ずかしいので、そういう手法になるのかな」(三尾郁恵撮影)
苦しい年月をつづった文章にもユーモアが息づく。「自分のことを語るのが恥ずかしいので、そういう手法になるのかな」(三尾郁恵撮影)
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 □べらぼうくん (文芸春秋・1200円+税)

 何げない日常風景にいつの間にか非現実が入り込む。笑えてほろりとする味わいも癖になる。「万城目ワールド」と称される奇想天外な物語で読者を魅了する売れっ子作家が、30歳でデビューを飾るまでの雌伏(しふく)の青春期をつづった。痛々しくも不思議と心がなごんでくる温かなエッセーだ。

 「エピソードはね、よく記憶しているんですよ。カギや切符は5秒前に置いた場所も10割の確率で忘れるんですけど」と笑う。

 「うまくいかないことも含めて楽しかった記憶なんじゃないですかね。なんやろ、暗くても彩りがある人生というか…。ひとつ、大事なものを切り売りした感じがします」

 タイトルの「べらぼう(篦棒)」を辞書で調べると〈程度が並はずれていること〉〈筋が通らないこと〉といった語釈のほかに、人をののしっていう語として〈あほう〉という意味も添えられている。実際、思わず「?」と首をひねりたくなる危うい選択、そして失敗談が満載なのだ。

 京都大のサークルで文章表現の面白さに目覚め、小説家を志したのが21歳のとき。ところが書き上げた青春小説は友人らに「気持ち悪い」と酷評され、新人賞に応募しても箸にも棒にもかからない。就職難の中で内定をもらった化学繊維会社をすぐに退職し、デビューのあてもない小説の道一本に絞る。当時26歳。その後3年余りに及んだ無職生活の始まりだった。

 「スーツ着て会社行くのも、みんなと一緒に行動するのも、心の底から嫌なんです。それに、評価はついてこないけれど小説は書くたびにうまくなっていく実感があった。生まれて初めてだったんですよね、誰の指示でもないことをやりだして、上達していく実感を得るのが」

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