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【朝晴れエッセー】クリスマスの奇跡・12月24日

 アメリカの高校に留学していたときの話だ。

 クリスマスの夜に、高校生の有志たちが老人ホームや病院に聖歌を合唱しにいくという。家族と一緒にクリスマスを祝うことができないお年寄りや入院患者に歌のプレゼントをするのだ。なるほど、これこそクリスマスらしい活動だと、私も参加することにした。

 老人ホームにも大きなクリスマスツリーが飾られていた。楽しいクリスマスの到来を伝える華やかな飾りである。しかし、その飾りに、寂しさをより募らせる人たちがそこにいた。家族と一緒にクリスマスを過ごせないお年寄りたちだ。老人ホームには孤独と諦めの空気が漂っていた。心からクリスマスを祝えない暗い雰囲気があった。

 そのなかで私たちは歌った。精いっぱいの笑顔で歌った。すると、次第にお年寄りたちの表情が和らいできた。穏やかな顔つきになってきた。一緒に歌ってくれる人もいた。家族や親戚(しんせき)が集まる、本来のクリスマスの姿とはかけ離れているけれども、ほんの少しでも愛あるクリスマスを楽しんでくれたなら嬉(うれ)しい。寂しさだけのクリスマスなど侘(わび)しい限りだ。

 ひとりのお年寄りがクリスマスツリーに手を触れて満面の笑顔で「メリークリスマス」と誰に言うともなく呟(つぶや)いた。するとそれを契機に次から次へとお年寄りたちが「メリークリスマス」と声を掛け合った。

 みんながいっせいに明るくなれるなんて、これこそ聖夜の奇跡だと思った。

佐々木 晋(すすむ) 58 北海道恵庭市

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