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【ビブリオエッセー】エポニーヌのように 「レ・ミゼラブル」ヴィクトル・ユゴー著 清水正和編・訳(福音館書店)

 昔住んでいた家へ久しぶりに帰った。子ども部屋に入ると懐かしい。本棚から、ある本を手に取る。浜田廣介『泣いた赤鬼』。人間と仲良くなりたい赤鬼のため青鬼が悪者になる話だ。思い出に耽りつつ、ある物語を思い出した。

 『レ・ミゼラブル』。初めて出会ったのは二〇一二年に公開された映画だった。小学五年生の私はたちまち引き込まれ、翌年の夏、図書館で、原作を編集した清水正和訳の本書を借りた。一言一句を理解することは難しかったが、映画版との違いや登場人物の細かい設定が面白く、読み耽った。意外な登場人物が兄弟だったり、映画にはない男女関係も描かれていた。

 主人公はジャン・ヴァルジャンだが、私はエポニーヌという女性に惹かれた。彼女にはマリユスという好きな人がいた。しかしマリユスはコゼットに一目惚れしてしまう。ところが彼女はマリユスの恋を応援するのだ。

 エポニーヌの死は不憫だ。反乱の蜂起の最中、政府軍がマリユスに銃を向け射殺しようとした。その直前に彼女は銃口を押さえ弾丸は彼女の体を貫いた。そして最後に「わたしが死んだら、額に接吻してちょうだい! 約束よ」。そう言ってマリユスの腕の中で息を引き取る。身を挺して彼への愛を貫いたのだ。

 見返りを求めず愛する人のため自分を犠牲にした彼女の生き方に「青鬼」を見た。私はエポニーヌや青鬼のような生き方をしたい。そして今、手元にあるのが三浦綾子『塩狩峠』。誰かのために生きられる、誰かのために死ねる人生の物語に、これからも小説を通して出会いたい。

 大阪市中央区 念治明美18

 【ビブリオ・エッセー募集要項】本に関するエッセーを募集しています。応募作品のなかから、産経新聞スタッフが選定し、月~土曜日の夕刊1面に掲載しています。どうか「あなたの一冊」を教えてください。

 投稿はペンネーム可。600字程度で住所、氏名、年齢と電話番号を明記し、〒556-8661産経新聞「ビブリオエッセー」事務局まで。メールはbiblio@sankei.co.jp。題材となる本は流通している書籍に限り、絵本、漫画も含みます。採用の方のみ連絡、原稿は返却しません。二重投稿はお断りします。

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