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【書評】『天皇と法王の架け橋 軍服の修道士 山本信次郎』皿木喜久著

皿木喜久『天皇と法王の架け橋 軍服の修道士 山本信次郎』(産経新聞出版)
皿木喜久『天皇と法王の架け橋 軍服の修道士 山本信次郎』(産経新聞出版)

 ■忠臣を通じて知る名君

 著者は本書で、明治10年に生まれ昭和17年に64歳で亡くなったカトリック教徒で帝国海軍軍人であった山本信次郎の希有(けう)な生涯と、山本が仕えた昭和天皇と日本の歩みを語っている。つまり、本書は、山本を通じて見える昭和天皇伝であり、激動の中の天皇と忠臣の物語だ。

 しかも、山本は、全く無名であるがゆえに、彼を通じて知る昭和天皇は新鮮であり、20世紀の世界史の中に、日本の重厚な名君として眼前に甦(よみがえ)ってくる。ここに、本書の一読に値する真価がある。

 嘉永6年の黒船来航以降に遭遇した「西洋」こそは、わが国の巨大な脅威であるとともに、「西洋」から学ぶことは死活的に重要だった。そして「西洋」の精神的中枢はキリスト教すなわちカトリックであり、その総帥はローマ法王である。

 大正10年、訪欧の旅に出た皇太子・裕仁親王殿下(20歳)は、イタリアのローマ法王庁を訪問し、法王ベネディクト15世(66歳)と会見した。この会見は訪欧途上に決定されるのだが、これを実現させたのは、カトリック信者で皇太子に供奉(ぐぶ)していた海軍大佐の山本であった。ベネディクト15世は書斎に皇太子と山本を招き入れ、皇太子に、ロシア革命を念頭に置いて反共主義を明確に打ち出し、日本の連帯を率直に求めた。

 この会見は皇太子に深い感銘を与え、ここから始まる皇太子・昭和天皇とローマ法王との信頼関係は、わが国の運命に関わってくる。昭和16年の日米開戦にあたり、昭和天皇は東条英機首相にバチカンを通じた和平工作について発言されてもいる。

 しかし、終戦の20年には、すでに山本はこの世にいなかった。「山本がいてくれたらなあ」と昭和天皇が言われたという。

 とはいえ、カトリックのパトリック・バーン司教やブルーノ・ビッテル神父は、GHQの対日方針に影響を与え、靖国神社を破却から守っている。昭和56年に、ローマ法王ヨハネ・パウロ二世が来日したとき、昭和天皇は皇居で、60年前のバチカン訪問のお礼を述べられた。そして今年、38年ぶりにローマ教皇(法王)が来日を果たした。

 本書の著者と、元二等海佐の中林恵子さんの協力に敬意を表し、一読をお薦めしたい。(産経新聞出版・1700円+税)

 評・西村眞悟(元衆院議員)

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