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【編集者のおすすめ】伝統芸能に新風吹き込んだ 『レバノンから来た能楽師の妻』

 梅若マドレーヌさん。能楽師で芸一筋の梅若猶彦さんの妻であり「上司」、そして本書の著者です。

 森英恵、コシノジュンコ、久保田一竹といった著名なデザイナーとのコラボ、国内外の公演の調整などを取り仕切るプロデューサーの彼女は、能の魅力・舞台裏を知り尽くしています。

 「ご主人とはどこで出会われたのですか」「古くから続く伝統芸能の世界にどうやって受け入れられたのですか」と必ず聞かれるそうです。彼女から編集部にかかってきた英語と日本語交じりの電話は「自分の体験を本にまとめるようずっと言われてきたので…」でした。

 祖国レバノンの内戦を逃れ来日した女子高校生がインターナショナルスクールで若き能楽師と出会う。結婚を決心し、コンピュータサイエンス研究の道を捨て、閉ざされた伝統芸能の世界に入る彼女を待ち受けていた試練とは…想像もできません。

 彼女は能楽師の妻として期待される振る舞いではなく、新風を吹き込みました。能楽堂の貴賓室に各国の要人を招待し、海外に発信する新しいスタイルを確立していきます。キリスト教を題材にした新作能はバチカン宮殿でローマ教皇の御前で上演されました。

 本書は著者自身の苦闘と達成の物語ですが、そこには日本社会が映し出されています。へこたれず、独特な世界に自分の居場所を見つけた彼女の軌跡が、今まさに困難を克服しようと頑張っておられる方を勇気づけることができればうれしい限りです。(梅若マドレーヌ著、竹内要江訳/岩波新書・780円+税)

 岩波新書編集部・島村典行

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