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【本ナビ+1】思考、視界広がる心地良さ 『生命式』村田沙耶香著 タレント・ホラン千秋

ホラン千秋さん
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 ベストセラーとなった芥川賞受賞作「コンビニ人間」で知られる作家の手による新しい短編集。収録された12作品はどれも劇薬のような強烈な読後感を残す。これまで当たり前だととらえていた固定観念や常識が激しく揺さぶられる。

 表題作「生命式」は、新たな弔いの儀式が広まった世界の物語。いきなり、こんな会話が出てくる。「中尾さん、美味(おい)しいかなあ」「男の人のほうが、いい出汁(だし)が出るっていうしね」。死んだ人間を食べながら、男女が“受精”相手を探す。相手が見つかった男女は会場の外に出て受精を行う。「死から生を生む」ようなこの新たな葬式が「生命式」なのだ。人類滅亡への不安が広がったこの世界では「繁殖」こそが正義となっている。だから生命式には国の補助金も出る。「世界はこんなにどんどん変わって、何が正しいのかわからなくて」。主人公の女性はそんな迷いを抱きながらも生きていく。

 一見突拍子もない世界のようで、私たちが生きている現実ともつながっていると感じた。この小説の世界のように常識や正義は、数十年という比較的短い期間でも大きく変わるものなのだ。身近なところでは、炎天下で水を飲まずに運動し続ける、なんてこともかつては普通に行われていた(今はこまめな水分補給が常識!)。そもそも「正しさ」はどこに視点を置くかで違ってくるし、科学の進歩によっても容易に反転する。

 読んだ後、こんな未来が来るわけないと思いつつも、どこかで人類が地球という惑星で生き残るには必要な変化なのかもしれない、と感じている自分がいる。固定観念が解きほぐされ、思考の幅や視界がぐっと押し広げられるのが心地良い。(河出書房新社・1650円+税)

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