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群馬・年の瀬記者ノート 台風19号で「鮮烈デビュー」 八ツ場ダムにかかる期待

八ツ場ダム=群馬県長野原町(橋爪一彦撮影)
八ツ場ダム=群馬県長野原町(橋爪一彦撮影)

 今年は、4月の統一地方選で群馬県内の各地を走り回っていたと思っていたら、5月に元号が平成から令和に代わった。夏の高校野球の取材では灼熱とは無縁の長雨に悩まされた。そんな年で、記憶に焼き付いたのは八ツ場ダム(長野原町)だ。

 日本中がラグビーワールドカップ(W杯)に沸く中、10月12日に台風19号が上陸。豪雨で全国各地の河川が氾濫し、県内では富岡市と藤岡市で、土砂崩れで計4人が死亡した。

 台風が去った後の10月15日、八ツ場ダムへ向かった。ダムを見下ろせる展望台「やんば見放台(みほうだい)」の駐車場は観光バスや他県ナンバーの車で一杯だった。記録的な雨量でほぼ満水となったダム湖を、観光客らは恐る恐る眺めていた。

 ダム湖には吾妻川から流れ込んだ茶色く濁った水がたまっていた。大量の流木やゴミ、大きな発砲スチロールが浮かび、今にもあふれそうな状況だった。

 ダムでは10月1日、本体の上流面の下部に設置した締切(しめきり)ゲートが降下し、堤内仮排水路が閉められ、試験湛水が始まった。

 当初は3~4カ月かけて常時満水位(標高583・0メートル)までためた後、1日に約1メートルずつ最低水位(536・3メートル)まで下げながら、ダム本体や基礎地盤からの水漏れがないか、貯水池周辺の安全性を観測機器を用いて試験する予定だった。

 それがわずか2週間で満水となった。上流の嬬恋村では吾妻川が氾濫し、橋や道路が流される被害が出ていたが、平然と濁流を受け止めたダムの存在は頼もしかった。「鮮烈のデビューだな」。思わず、そうつぶやいてしまった。

 今月10日、ダムを再び訪れた。水位が下がり、貯水率が2・5%まで低下したダム湖の湖面は薄緑色で、きらきらと穏やかに輝いていた。平日なのに、高台にある共同浴場「王湯(おうゆ)」には露天風呂からダムを眺めようと、入浴客がひっきりなしにやってきていた。

 昭和27年に調査が始まり、総事業費5320億円のダムは来年3月末までに完成する。公募したダム湖の名称は1月までに決まる。

 ダム建設に伴い、川原湯温泉はダム湖畔の高台の代替地に移転。川原湯温泉協会の樋田省三会長は「800年間受け継いできた源泉を武器にダムと共存しながら川原湯温泉を再建したい」と語る。

 治水効果だけでなく、地域活性化の面でもダムにかかる期待は大きい。(橋爪一彦)

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