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モデルと農業も 担い手不足の新たな秘策

多様に広がる農業の可能性
多様に広がる農業の可能性
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 日本の農業は今、生産者の高齢化や耕作放棄地の増加などといった大きな課題を抱えている。その一方で、食の安全に興味を持つ人や、第二の人生の過ごし方を考える人の間では農業への関心も高まっている。こういった需要をとらえて、より多くの人に農業への理解を深めてもらうことで、現状の課題を解決に導こうとする取り組みが今、関西で広がりつつある。(秋山紀浩)

「農」の全日制学校

 「ホウレンソウを栽培するにはどのような工夫が必要か、実際にやってみましょう」

 12月初旬、兵庫県丹波市内にある畑で講師が呼びかけると、20~60代の幅広い年齢層の受講生たちが農機具を手に作業に取りかかった。

 今年4月、丹波市に開校した、有機農業について学ぶ全日制教育施設「農(みのり)の学校」の授業風景だ。

 全国初の取り組みで、同市が整備した施設を使い、京都市に本社を置くベンチャー企業「マイファーム」が運営している“公設民営”の農業学校だ。1年間のカリキュラムで約1・5ヘクタールの栽培実習用農地を使って実践的な農業を学べるといい、第1期生には、京都府内をはじめ、大阪府や、島根県、東京都などから20~60代の計15人が集まっている。

 「学校に入って一番よかったのは『農業で稼ぐのは簡単ではない』と知ることができたこと。作物を栽培するだけでなく、付加価値を高めたり、営業活動をしたりすることも大切だと日々学んでいます」。東京から丹波市に移住した古谷浩二郎さん(44)はこう話す。

「就農への第一歩」

 大自然に囲まれた田舎暮らしのイメージだけで新規就農を目指しても、農地を借りられなかったり、地域に溶け込めなかったりと、理想だけではうまくいかないことも多い農業。学校では栽培だけでなく、最先端のICT(情報通信技術)を利用した経営戦略や、地域とともに取り組む農業計画についても教えていく。

 古谷さんは「現実を直視せざるを得ない場面もあるし、誰でもウエルカムとはいえない。しかし、就農のための一歩としてたくさんのことが学べる。受講できてよかったし、自分たちの姿を見て関心を持ってくれる人が増えたらうれしい」と話した。

多様に広がる「農」

 生活するために必要な生業としての農業がある一方で、今、食の安全や食育への関心の高まりなどから、趣味や文化として農業をとらえる人も増えている。

 マイファームでは耕作放棄地などを整備して、気軽に野菜づくりを楽しむことができる体験農園を運営する事業も全国で展開。現在、13都府県で100カ所を超える農園を持つ。

 「きれいな花を目で見て楽しみながら、安全に食べられる。農場というよりガーデニング感覚な場所ですね」。宇治市の体験農園で32平方メートルを借りて20種類以上のハーブや野菜を栽培している松井まり江さんは農園に通う楽しさを語る。

 「どんな花が咲き、どんな香りがして、どんな虫がくるのか。栽培しながら効能だけではないハーブの魅力に出合える場です」と話し、ここで農業体験することが豊かな生き方につながっていると強調した。

 ファッションモデルの活動と並行して横浜市の体験農園で野菜づくりにいそしむ原田維秀(ゆきひで)さん(28)も「生産農家になるというよりも、土をいじったり、皆で集まったりすることが僕たちの農業の楽しみ方」と軽やかに話す。

 社会でデジタル化が進み、実体験が得にくい時代こそ農業が大切だといい、「食べたいと思ったものを育てて体験できる。農作物をモデル仲間などにプレゼントする。それが楽しみ」と満足している様子だ。

「自産自消」の社会を

 農林水産省の統計によると、農業就業者の人口は減少傾向にあり、平成30年は175・3万人と3年前の27年から約34・4万人減った。一方で平均年齢は上昇傾向にあり、30年は66・8歳。8年前の22年から約1歳上昇している。耕作放棄地も平成27年には42万3千ヘクタールに上る。

 こういった現状を踏まえて、課題解決に取り組んできたマイファームの西辻一真社長(37)は「全国で耕作放棄地は増え、自然と人との距離が離れているのを感じてきた。その距離を近づけることが私たちの役割」と指摘する。

 西辻さんは耕作放棄地を減らし、ゆくゆくは日本の食料自給率を上げるための事業を進めてきた。そのために、農業経営にデータ分析を取り入れたベンチャーと提携したり、農家が小売業者などと直接交渉して価格決定できるサービスを模索する。「あらゆる事業を通して、農業を暮らしに取り入れる人たちを増やし続けて“自産自消”の社会を作りたい」と将来を見据えている。

【プロフィル】秋山紀浩(あきやま・のりひろ) 平成19年入社。姫路支局、神戸総局などを経て、昨年11月から京都総局。東京の郊外出身で実家は農家。畑で収穫されたトマトやホウレンソウを食べて育ってきた。若い頃は農作業を「苦」としか思っていなかったが、記者になり多くの農家を取材するうちに、農業の楽しさに気付いてきた。推しの野菜は「淡路島産のタマネギ」

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