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【書評】『放送作家の時間』大倉徹也著

 ■テレビ初期の息吹伝える

 放送作家はテレビ、ラジオの重要なスタッフなのに、かつては劇作家や小説家たちの片手間の仕事ぐらいにしか思われていなかった。大倉徹也氏が永六輔との出会いをきっかけに放送作家としてのキャリアをスタートさせた昭和31年は、まだそんな時代だった。その後、NHK「夢であいましょう」、TBS「8時だョ!全員集合」、TBSラジオ「小沢昭一の小沢昭一的こころ」など人気番組を多数手掛けることになる。

 評者は大倉氏と面識はなかったが、本書のタイトルに興味を抱き、夢中になって2回も読み返してしまった。初期のテレビ放送の現場で多くの才能が知恵を出し合い、それが現在のように進化してきたことが理解できた。残念なことに、彼は今年2月4日に86歳で永眠している。

 大倉氏は台本を書く前に、有名無名に関係なく必ず出演者と会い、綿密な取材を行った。そうして出演者から本音を引き出した。

 NHK「ビッグショー」には、そんな取材の成果が存分に反映された。出演する加山雄三の自宅を訪ねるとピアノがあった。今でこそ広く知られているが、加山は音楽好き。ピアノコンチェルトを作曲させ、父親の俳優、上原謙に演奏をささげるという粋な演出を思いつく。そのころ、加山と上原の関係はギクシャクしていたというから、大変な賭けである。大倉氏は上原と何度も面会していたので自信があったのかもしれないが、今そこまで手間をかけるテレビマンは果たしているだろうか。

 NHK「この人…ショー」の第1回では作家の松本清張を出演させた。当初はテレビで見せ物にされるのでは、と警戒されたが、説得に成功する。ベストセラー作家が出演したという実績から、その後何人もの小説家が出演するようになって、テレビ番組の可能性を広げたというから功績は大きい。

 メディアや舞台に並々ならぬ情熱を傾け、アイデアが豊富な大倉氏はテレビ局にとって声を掛けやすい存在だったのだろう。そして仕事の注文が飛び込んでくると、どんなに忙しいときでも引き受けたという。私はディレクターとしてレコード会社に勤めていたが、分野は違えど同時代の息吹が感じられた。(イースト・プレス・1600円+税)

 評・長田暁二(音楽文化研究家)

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