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【本ナビ+1】『レンマ学』中沢新一著 文芸評論家・富岡幸一郎

富岡幸一郎氏
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 ■硬直した知性ときほぐす

 『チベットのモーツァルト』という不思議なタイトルの本で中沢新一が登場したのは、昭和58年のことだった。チベットとモーツァルト? 一見全く関わりのないものを結びつけて、そこに新たな意味と発見をもたらす。中沢氏は知の奇術師のような相貌で、以後、宗教・哲学・科学・芸術などの諸ジャンルを縦横無尽に走り抜けてきた。

 その走り方があまりに速すぎて、読者は時々けむに巻かれた気になるが、本書を読むと、それはひとつの山の頂を目指していたことがわかる。チベット密教から出発した中沢氏の来歴から、仏教が常に関心の的にあったのはわかるが、その中心が『華厳経』で、僧、龍樹(ナーガールジュナ)の『中論』に説かれた理論(一は肯定、二は否定、三は肯定でも否定でもないもの、四は肯定でも否定でもあるものという四つの論理)であったことが、ここで展開されている。

 西洋のロゴス(論理)は、肯定と否定とが思索への基準となるが、否定でもなく肯定でもないもの、そして否定でも肯定でもあるものとしての、縁起の論理たるレンマこそ、人類の心の潜在能力であることが指摘される。著者はこのギリシャ語の語源的には「事物をまるごと把握する」直観的認識の、その深く広い力に注目する。

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