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【ロングセラーを読む】『決断力』羽生善治著 逆境の心構えを勝負師が伝授

羽生善治九段著『決断力』
羽生善治九段著『決断力』

 原則として棋士養成機関「奨励会」を突破しなければ棋士になれない将棋界で前人未到の永世七冠を達成した羽生善治九段が勝負師の「決断力」を伝授している。平成17年出版の本書はこれまでに50刷、計52万部を売り上げる。

 15歳で史上3人目の中学生棋士としてデビュー。19歳で初タイトルを獲得して以降、積み重ねたタイトルは通算99期。平成8年には史上初の全7冠制覇を果たすなど数々の金字塔を打ち立ててきた羽生九段だが、有名なのが「羽生マジック」だ。「複雑な局面で指した手が、相手や周りの人たちには信じられない手に映るようだ。だが、逆転に狙いを定めた起死回生の一手ではない。相手に罠(わな)をかけるような手は指さない」と明かした上で、「『勝負のツボ』に対する感覚が少しだけ他の人とは違うのだと思う」と記している。

 将棋は一つの局面で、正確な判断を下さなければならない。長年の経験から「良い手」「悪い手」「流れ」を瞬時に判断し、次の一手を選択する。そこには解決のための「ツボ」があり、それを見つければ複雑に見える局面も短時間で理解できるという。それは将棋だけに限らず、あらゆる分野でも生かすことができる。

 羽生九段が人間の優れた資質の一つとして挙げるのが「直感力」、言い換えれば「勘」。これまで指してきた公式戦で直感によって閃(ひらめ)いた手の、ほぼ7割が正しい選択だった。過去の経験の積み重ねで培ったことが無意識に浮かび上がってくる。この「直感力」と、全体を判断する「大局観」のバランスが力を発揮するという。社会や学校などで逆境や追い込まれたときにも通じる心構えだ。

 棋士たちは数々の勝負で「集中力」を発揮する。ただ、羽生九段は「集中力は教えてもらったり、聞いたりして身につくものではない。集中できる環境を自らつくり出すことこそが大切」とする。

 情報社会の昨今、「選ぶ」ことよりも「いかに捨てるか」という重要性も述べている。必要な情報に新しい発想やアイデアや見解を加え、それを実践していくことで生きた知識が積み重なっていく。

 本書を通じて、決断力を向上させることが成功には必然であることを実感した。(角川新書800円+税) 田中夕介

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