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【親愛なるゴッホへ】(2)ゴッホらしくないルーツ絵 ひろしま美術館・学芸部長 古谷可由さん

フィンセント・ファン・ゴッホ 《馬車乗り場、ハーグ》1881-83年、ベルン美術館(イェグリ=ハーンローザー財団寄託)(C) Kunstmuseum Bern, permanent loan from Hahnloser/jaeggli Foundation
フィンセント・ファン・ゴッホ 《馬車乗り場、ハーグ》1881-83年、ベルン美術館(イェグリ=ハーンローザー財団寄託)(C) Kunstmuseum Bern, permanent loan from Hahnloser/jaeggli Foundation
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 《馬車乗り場、ハーグ》

 この絵との出会いは衝撃的だった。「きれいで、美しく、都会的で、洗練されて」いる。すなわち、「ゴッホらしくない」のである。初めて、ゴッホとハーグ派の関係に興味をいだいた。

 ゴッホは独学で絵を学んだ。画家になることを決意した後、まずは見本帳や版画を頼りにデッサンをすることからはじめた。そもそも「炎の画家」として知られるゴッホだが、その実きわめて堅実でまじめであった。いきなり油絵を描くのではなく、当時も今も一般的な基礎からはじめたのである。

 一方、油絵は最初親戚でもあったアントン・マウフェに学んだ。ハーグに住む画家で、以後いわゆるハーグ派の画家たちと交流をもち、彼らから多くのことを得た。それでも堅実なゴッホは、油絵が「なかなかうまくいかない」「デッサンに戻った」などと、油絵に対する苦労を述べている。

 この作品は、その試行錯誤していた頃の作品である。しかし、そんな苦労などまったく感じさせない。むしろ絵の具の使い方もこなれた感じがする。後年の重たい感じの絵とは異なり、透明感のある作品である。ハーグ派の画家たちに共通した特徴でもあった。古都ハーグの都会的なイメージが強い作品に仕上がっている。ゴッホの絵のルーツがここにあり、後でまったく異なった方向へ進むのも、かえってほかの大きな理由があったことを物語っている。私にとって、ゴッホの真の姿に興味を持つきっかけとなった作品だった。

ふるたに・よしゆき 広島大学客員教授、広島市立大学非常勤講師。全国巡回展「ゴッホの原点 オランダ・ハーグ派展」日本側監修。平成27年、西洋美術振興財団学術賞受賞。

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