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【ビブリオエッセー】あなたの言葉には、力がある 「毒吐姫(どくはきひめ)と星の石」紅玉(こうぎょく)いづき(電撃文庫)

 冒頭から響く罵声にあなたは驚くかもしれない。けれど彼女の言葉は明快で悲壮さがない。私が惹かれた理由だ。大人は子供のようには泣けない。自ら涙するきっかけを作って感情をコントールし、次の一歩を進む力にする。私がそれを必要とするとき読むのが、本書だ。

 占の国ヴィオンの城に生まれたエルザは占いによって生まれてすぐに貧民窟へ捨てられた。物乞いをして育った彼女は「毒吐姫」の呼び名で権力者を嘲笑の種に、酒場の客からもらう日銭で暮らす。しかし占いにより再び城へと連れ戻され、聖剣の国レッドアークの王子に嫁がされる。二度と毒が吐けぬよう、その鮮烈な声を奪われて。

 ところが嫁いだその日に事態は一変した。エルザは声を取り戻す。声さえあれば生きていけると王子や騎士の妻オリエッタに城を出ると宣言するエルザだが、行く当てなどないことを自覚する。城に留まっている間、「あなたの言葉には力がある」とオリエッタはエルザに語る。

 「わたくし達は剣ではなく言葉を振るわなければならない。盾をかかげるように笑わなくてはならない」「必要とあらば、どれほど毒を吐いても構わない。それはあなたの武器よ。だからこそ、磨かねばならないの。あなたの言葉で、誰かを動かし、人を救う、そのために」

 そして陰謀は動く。ヴィオン落城。収まらないクーデターにエルザは帰還を決意した。姫の言葉なら届くかもしれない、自分の首ひとつで終わるのなら、という覚悟を持って。散りばめられた星々のような言葉が、私を励ます。

 大阪市北区 おじぎ 31

 【ビブリオ・エッセー募集要項】本に関するエッセーを募集しています。応募作品のなかから、産経新聞スタッフが選定し、月~土曜日の夕刊1面に掲載しています。どうか「あなたの一冊」を教えてください。

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