PR

ライフ ライフ

【親愛なるゴッホへ(1)】療養院に横たわる世界発見 女優・鶴田真由さん

フィンセント・ファン・ゴッホ《サン=レミの療養院の庭》1889年5月、クレラー=ミュラー=美術館(c)Collection Kr?ller M?ller Museum, Otterlo, The Netherlands 
フィンセント・ファン・ゴッホ《サン=レミの療養院の庭》1889年5月、クレラー=ミュラー=美術館(c)Collection Kr?ller M?ller Museum, Otterlo, The Netherlands 
その他の写真を見る(1/2枚)

 大学3年生の夏休みにいくつかの私立大学の先生方が企画している「ヨーロッパ美術館巡りの旅」に参加した。ひと月かけて毎日、6カ国に点在する美術館の主要な作品を観(み)てまわるものだった。その旅の中で一番心に残った作品を卒論のテーマにしようと思っていた。そして、旅が終わって決まった卒論のテーマは「ゴッホの精神病について」だった。ありきたりかもしれないが、ゴッホの晩年の絵に心を打たれた。なんの知識もなかった私は帰国してからゴッホについて調べてみると、心に残った作品はみな「サン=レミの療養院の庭」で描かれたものだった。精神的には一番不安定だった頃だ。

 今回、その「サン=レミの療養院の庭」そのものを描いた絵が展示されている。ここでゴッホは弟のテオに「荒れ果てた庭で十分に仕事ができている」と手紙に記していた。野性味溢(あふ)れるこの庭で、ゴッホはたくさんのことを発見し、それを絵にしたためたに違いない。1889年5月に描かれたこの絵には、美しい光を纏(まと)い始めたサン=レミの光と生い茂る草木の生命力が描かれている。花も咲き、気分も上向きだったのかもしれない。

 昨年の夏、ここサン=レミの療養院を訪れた。今は観光名所の一つになっていて、ゴッホが絵を描いた場所にはその作品の写真が展示されていた。数百メートルの圏内で描かれた絵の数に驚いた。ゴッホはここ「サン=レミの療養院の庭」ですぐそばに横たわるたくさんの世界を発見したのだと思う。

つるた・まゆ 昭和63年女優デビュー。平成8年「きけ、わだつみの声」で日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。近年は旅番組への出演も多い。

 鮮烈な作風で時代を越えて愛され続ける画家、フィンセント・ファン・ゴッホ。その初期から晩年までの重要作品が結集する「ゴッホ展」(東京・上野の森美術館で来年1月13日まで開催)から、「この一枚」を選んで、思いを語ってもらった。

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ