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【聞きたい。】町田明広さん 『新説 坂本龍馬』“ぜい肉”削いだ実像の魅力

町田明広・神田外語大准教授
町田明広・神田外語大准教授
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 日本史上の人物でもトップクラスの知名度と人気を誇る幕末志士、坂本龍馬。司馬遼太郎の代表作『竜馬がゆく』が描いたような、どこの藩からも自由な立場で己の力量のみを頼りに新時代を切り開いたヒーロー、といった人物像が一般に広く流通している。

 だが幕末政治史、特に薩摩藩研究を専門とする歴史学者の著者は「龍馬は巷間(こうかん)思われているような一匹オオカミではなく、実質的な薩摩藩士だった」と指摘する。一次史料を丹念に分析した実証的見地から、龍馬の事績とされてきた「亀山社中」創設や薩長同盟仲介などの伝説を一つ一つ否定し、複雑な政治情勢や身分制社会の中、薩摩藩に所属して各勢力のパイプ役として活動した一人の志士の等身大の人生を描き出す。

 「現在の龍馬イメージが形成されたのは、『明治百年』を迎えた戦後の高度成長期。今後は軍事ではなく経済で世界に伍(ご)していこうという時期に、創作を基に海援隊を率いた“ビジネスマン”龍馬像がクローズアップされた」

 ただ、だからといって龍馬の功績が全くなくなったわけではない。「龍馬でなければ薩摩と長州の融和のきっかけは作れなかったし、外交家としての龍馬は大いに評価されるべきだろう。薩長関係といった幕末政治史の王道の中で龍馬は活躍しており、彼抜きにしては語れない」。特に慶応3(1867)年に薩摩と土佐が締結し、その内容が後の五箇条の御誓文や大政奉還にも影響してくる薩土盟約で龍馬がきわめて重要な役割を果たしたことはこれまで注目されておらず、膨らんだ虚像の裏で過小評価されている部分も少なくないという。

 「後世に盛られた“ぜい肉”を削(そ)ぎ落としても龍馬の価値は色あせない。今まで見落とされてきた部分に光を当てて実像を浮かび上がらせることで、新しい龍馬の魅力を感じてもらえれば」(集英社インターナショナル・900円+税)

 (磨井慎吾)

【プロフィル】町田明広

 まちだ・あきひろ 昭和37年、長野県生まれ。佛教大大学院文学研究科博士後期課程修了。神田外語大准教授・日本研究所副所長。著書に『薩長同盟論』『島津久光=幕末政治の焦点』など。

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