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【ビブリオエッセー】女絵師の描いた一枚の絵から 「眩 くらら」朝井まかて(新潮文庫)

 欧米では記憶に残る日本人として葛飾北斎を挙げる人が多いと知り、これは認識不足と、北斎の特別展を観に行きました。少し前のことです。その中で北斎より引き寄せられたのが北斎の娘、応為(おうい)の「吉原格子先之図(よしわらこうしさきのず)」。格子越しに遊女たちを描いた浮世絵で、西画(洋画)の影響も感じますがそれとも違い、濃淡をもって陰影や深浅が表現された独特の世界でした。

 この絵を表紙に使っていたのが『眩』。書店で見つけた時、当然のように購入しました。画業に専念する北斎のかたわらで手助けする娘の「お栄」が自分の創作にも果敢に挑んでいくお話です。お栄の号が「応為」。一説には、北斎からいつも「オーイ」と呼ばれていたためだそうです。男勝りな彼女の一途さと際立つ個性が、朝井さんの想像力でよみがえります。

 特別展では、有名な「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏(なみうら)」の波がシャッター速度五千分の一でないと止まって見えないのだと知り、驚きました。北斎の画力は齢を重ねて磨かれます。最晩年も「日課獅子」と称して、毎日一枚描いていたことも驚きでした。

 その北斎が「お栄の方がおれよりうまい」と語ったそうですが、親のひいき目でもなさそうです。お栄は晩年になって「吉原格子先之図」に取り組みます。「また何で、そんな難しいことに挑みたがる」と自らに問うお栄は「挑む方が、面白いじゃないか」とさすがに腹が据わっている。

 謎も多いお栄。筆一本持って北陸方面に旅立ったのを最後に消息が途絶えたとも伝わります。浮世絵を心より愛した父と娘でした。

大阪市東住吉区 村上耕司74   

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