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【文学五輪】「世界小説」への野望、衰えず 謎多き隠遁作家トマス・ピンチョン

新潮社から刊行されている「トマス・ピンチョン全小説」。『重力の虹』は日本語にして原稿用紙約2900枚という大作だ
新潮社から刊行されている「トマス・ピンチョン全小説」。『重力の虹』は日本語にして原稿用紙約2900枚という大作だ

 ノーベル文学賞の受賞者予想には必ず名前が挙がる巨匠。でも公の場には全く姿を見せない。米国のトマス・ピンチョン(82)は多くの謎に包まれた隠遁(いんとん)作家だ。近現代の世界史そのものを落とし込んだような重厚長大かつポップで笑える小説を書き続け、研究者の探求心に火をともす。

 「謎」をめぐるユニークな逸話には事欠かない。世に出回っている顔写真はデビュー前の数枚だけ。自身の全米図書賞授賞式でコメディアンを代わりに登壇させたり、アニメ「ザ・シンプソンズ」に本人役で声の出演をしたり。徹底した秘密主義ぶりから、同じく隠遁作家だったサリンジャーとの同一人物説がささやかれたこともある。

 「自分の足跡を消すことに異様な執念を燃やす。ふざけたことに対してまじめな人」と話すのは「トマス・ピンチョン全小説」(新潮社)の邦訳も手がけるフリーランス研究者の佐藤良明さん。研究者の熱意によって明らかになった伝記的事実もある。英国から渡ってきた最も古い家柄の出身で、名門コーネル大で学んだのは応用物理学と文学。2年の海軍生活をはさんで最優等で卒業後、ボーイング社に勤めた経験もある。

 文理を横断する博識と最先端のテクノロジーへの好奇心を兼ね備える。秘密の郵便組織の影を探偵小説仕立てで紡ぐ『競売ナンバー49の叫び』(1966年)など60年代のカリフォルニアを舞台にした作品群も人気があるが、本領は複数の筋立てが交差する百科全書的な「世界小説」にあると佐藤さんは言う。

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