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【父の教え】今も追いつきたくて テノール歌手・秋川雅史さん

「何でもポジティブにとらえるところは父譲り」と語る秋川雅史さん(酒巻俊介撮影)
「何でもポジティブにとらえるところは父譲り」と語る秋川雅史さん(酒巻俊介撮影)
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 「秋川先生の子なら歌がうまいだろう」

 今から38年前。中学校の合唱部顧問からの誘いのひと言で、14歳の少年が進路を決めた。

 「秋川先生」というのは愛媛県の高校音楽教師、秋川暢宏さん。その息子が、当時中学3年生の雅史さん(52)だ。後にテノール歌手になり、「千の風になって」を大ヒットさせた。

 「本気で歌うのは格好悪い」と音楽の授業も適当にごまかしてきた中学生が、歌の名手を父に持ったばかりに抜擢(ばってき)された。ところが、歌ってみると伸びやかな声が出て、周囲も本人も驚いた。何にも代えがたい楽しさ、気持ち良さ。秋川さんは自らの可能性に気づき、すぐに声楽の道に進むと決めた。

◆やりたくなったら

 やんちゃで勉強もいまひとつ。そんな秋川さんを、暢宏さんは「とにかく放っておけ」「やりたくなったら(勉強を)やるだろうから」とおおらかに見守った。

 秋川さんは歌手になった今、この父の「放っておけ」にとても感謝している。母の苗(さなえ)さんは何とかもっと勉強を、と望んでいたからだ。

 「塾に通ってエリート大学に行ける学力がついていたら、別の人生だったでしょう」

 やりたくなったら、やる、というのも暢宏さん自身の音楽体験に裏打ちされた言葉だ。

 たとえばピアノ演奏。暢宏さんはそれを誰かに習ったわけではない。

 戦後、中国・大連から引き揚げ、愛媛で送った秋川家の暮らしは貧しく、当初は他人の家の軒先を間借りしてしのいだ。とてもピアノを買ったり、習ったりできる状況ではない。音楽が好きだった暢宏さんは放課後や休み時間に学校のピアノを弾いて練習した。やがてベートーベンのソナタも弾けるようになった。

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