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【ビブリオエッセー】怪談集でリアルな夢を 「聊斎志異」蒲松齢著 立間祥介訳(岩波文庫)

 『聊斎志異(りゅうさいしい)』といえば中国の怪談集で、あの「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」など映画の原作になった小話もあり、怪談の親玉のように言われている。近代以前の中国は世界に冠たる怪談王国で、膨大な量の怪談が残されている。そのうち日本に紹介されたのはわずかだが、日本の怪談はその多大な影響を受けてきた。

 一読して気づくのは、日本の怪談とは何かが違うということだ。中国の怪談はなんともリアルなのである。狐が化けた女や仙女や幽霊などが生身の人間と結婚して子供を産んだり、死後の世界でもお金が必要で生活のために官吏登用試験を受けなくてはいけなかったり…といった具合だ。日本の怪談でここまで生々しいものは珍しい。

 『聊斎志異』の一話「書痴」に及んでは、好きな本を読んで現実逃避に走る書生を「織女」(七夕の織姫のことである。ここではなぜか書生の妻になっている)が叱ったりするのだ。試験に関係のない本ばかり読んでいては駄目だ、真面目に勉強しなさい、と叱咤激励する怪談など日本では聞いたことがない。

 ただ、この一事から「中国人は現実主義だ」と決めつけるのは早計だろう。だらしない男がこの世のものではない女性に救われ、奮起して、やがて成功するという怪談が中国には実に多いのである。

 描かれた女性たちは主人公の男たちよりはるかに魅力的で生き生きとしている。松齢の集めた話の作者や話者は男ばかりだから、そこにあるのは彼らの夢であり、やはり非現実なのだ。リアルな夢を見たい方にはお勧めである。

 兵庫県川西市 胡宮山 47

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