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似顔絵や捕物帳、学術書…利用広がるオンデマンド書籍

オンデマンド書籍の季刊雑誌「捕物小説」。岡本綺堂「半七捕物帳」などの名作が掲載されている
オンデマンド書籍の季刊雑誌「捕物小説」。岡本綺堂「半七捕物帳」などの名作が掲載されている

 注文に応じて本を1冊ずつ印刷・製本するオンデマンド(POD=プリント・オン・デマンド)書籍。日本でサービスの提供が始まって約10年になるが、最近は個人出版で100万円以上売り上げる本もあるなど急成長している。(文化部 平沢裕子)

最短30分で

 一般的に流通している本は、出版社が最初に大量印刷したものを取次を通して書店に卸し、店舗やインターネットサイトで販売、売れ残った場合は返品される。これに対し、オンデマンド書籍は注文があったらデジタルデータで保存されている書籍を1冊ずつ印刷・製本してお客に渡すので売れ残ることがなく、出版社や書店が在庫を抱えるリスクもない。日本では三省堂書店やインターネット書店のアマゾン、楽天ブックスなどで購入が可能だ。

 平成22年からサービスを提供する三省堂書店は2万6千タイトルを扱う。神保町本店では注文から最短30分で出来立ての本が受け取れるほか、インターネットや本店以外の店舗での取り寄せができる。営業企画室の比嘉栄課長は「学術的な専門書や需要の少ない外国語の会話本など、これまでは返品リスクから出版をあきらめていたような内容の本が好評。こうした本はすぐに大量に売れるわけではないが、長期間にわたって継続的に売れている」と話す。

特注や大活字も

 2005年に米国でサービスを始めたアマゾンは、日本では平成23年からサービスを開始。300万タイトル以上を扱い、その9割を洋書が占める。広報担当は「オンデマンド書籍なら、海外の出版物を日本への輸送費や在庫保管費などを軽減して販売することができる。特注本や大活字版など従来はコストがかかっていた商品も低コストで提供できるなどメリットが多い。日本の本では出版社経由では出版に至らないような個人出版に近いものが人気」という。

 似顔絵師の夫婦、マジェリン&かっとさんは昨年1月、似顔絵の技術書「似顔絵って難しいよね 似せるための観察方法と考え方」をオンデマンド書籍で出版した。従来の出版社から出す方法だと大衆向けを意識せざるを得ず、売れても手取りが少ないと考えたためだ。マジェリン&かっとさんは「似顔絵好きの一部の人にグッと刺さるような本にしたかった。出版社を通さないのでデザインや校閲などすべて自分たちでやらないといけないが、自分たちの表現をそのまま伝えられるのがいい」と話す。

 特別な宣伝活動はしなかったが、今年10月までに1230冊、約300万円を売り上げ、約85万円の利益を得た。2人は「似顔絵教室の生徒さんや同業者の方が予想以上に評価し、宣伝してくれた。いつか書店に並ぶような大衆向けの似顔絵の本も作ってみたい」と意気込む。

「紙で読みたい」層へ

 江戸時代を舞台とした捕物帳を愛読する長瀬博之さん(67)は、絶版となった捕物帳を掘り起こし、季刊雑誌「捕物小説」や復刻版の単行本をオンデマンド書籍で出版する出版社「捕物出版」を昨年10月に立ち上げた。

 「現代作家も捕物帳を書くが、人気絶頂期の昭和に書かれた作品は圧倒的にうまく、多くの人に読んでもらいたかった」と長瀬さん。本が売れない時代だけに、在庫リスクがないオンデマンド書籍にした。在庫リスクがないという点では電子書籍も同じだが、「捕物帳ファンは小説は紙で読みたいだろう」と考えたためだ。

 ただ、捕物帳のメインの読者層は50代から70代の中高年でインターネットの利用が得意でない人も多い。「年配の人はオンデマンド書籍が何か知らない人も多い。読者への周知が最大の課題」と話している。

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