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【書評】『憲法の正論』西修著 歪曲正し、欺瞞打ち砕く

 『憲法の正論』を読んで、西修氏ほど真っ当な日本国憲法研究者はいないという年来の確信をさらに深めた。

 戦後日本の歪(ゆが)んだ言語空間の中で、日本国憲法をめぐる東京大学、宮澤俊義氏の系譜に連なる学者たちほど重い責任を負うべき存在はない。彼らの偏向した政治的視点で紡ぎ出された憲法論ほど日本国と日本人の気概をそぎ落としたものはない。

 自衛隊を違憲の存在だとする宮澤門下の憲法学者は、まるで自衛隊解消を党是に掲げる共産党と双子のようだ。彼らは「前文」に描かれた虚構の国際社会に国民の命と国家の安全を託し、日本国には国民の命と国土を守る権利も力も認めない。

 西氏は本書で東大憲法学のその欺瞞(ぎまん)を打ち砕く。日本国憲法制定過程をたどり、自衛戦争、自衛のための武力行使および自衛戦力の保持は禁じられてはいないと解説した序章は秀逸かつ明快である。東大憲法学者の間違いと自衛隊が合憲であることを明確に示したくだりだ。

 自衛戦争放棄を明記した「マッカーサー・ノート」は昭和21年2月3日に示されたが、10日後に日本側に提示されたGHQ(連合国軍総司令部)の草案からは右の部分が消えていた。衆議院で加えられた「前項の目的を達するため」という芦田修正の「前項の目的」が、国際平和を誠実に希求するために侵略行為は行わないということであり、日本は侵略を目的とする戦争や武力行使こそ放棄したが、自衛戦争や自衛のための武力行使は放棄していない。そのことを当時のGHQも世界も認めていたとする西氏の論には、説得力がある。宮澤学派の自衛隊違憲論は学問とは無縁のイデオロギーにすぎないのである。

 米トランプ大統領の口から日米安全保障条約破棄論が、私的会話ではあるが飛び出した。足下の朝鮮半島も中国情勢も厳しい。わが国が、基本法たる憲法についての歪曲(わいきょく)を正し、独立国としてのまともな憲法へと改正することなく、この危機を乗りこえるのは困難だろう。

 にもかかわらず憲法改正の議論を求める声に立法府は応じない。国家の安全と国民主権の障害物になり果てた東大憲法学の欺瞞と国会の責任を明確にしたのが本書である。(産経新聞出版・1600円+税)

 評・櫻井よしこ(ジャーナリスト)

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