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【正論1月号】“蛆山”に眠る戦没者遺骨 収集は政府の義務だ ジャーナリスト 長谷川学

戦没者遺骨収集事業を巡る遺骨の取り違え問題に関し、記者会見する厚労省の担当者=9月19日午後、厚労省
戦没者遺骨収集事業を巡る遺骨の取り違え問題に関し、記者会見する厚労省の担当者=9月19日午後、厚労省

 ※この記事は、月刊「正論1月号」から転載しました。ご購入はこちらへ。

 政府の遺骨収集事業の信頼性が根底から揺らいでいる。厚生労働省がシベリアから持ち帰った遺骨が日本人ではなかったという驚くべき不祥事が発覚したからだ。

 政府は二〇一六年に「戦没者の遺骨収集の推進に関する法律」を施行。一六年度から二四年度までを遺骨収集の「集中実施期間」と位置づけ、一六年度以降、毎年、約二十三億円を支出し、遺骨収集にはずみをつけようとしていた。

 その最中の不祥事である。それでなくとも遺骨収集事業は遅々として進んでいない。海外で戦病死した旧日本軍の総数は約二百四十万人だが、このうち日本に戻れた遺骨は約百二十八万人に過ぎず、約百十二万人の遺骨が日本への帰国を待っている。彼らは、いつ日本に帰れるのだろうか。住民も恐れる山に日本軍兵の遺骨 今年八月、ミャンマー(旧ビルマ)の知人から旧日本軍の遺骨に関する情報が届いた。

 「ミャンマーに“蛆山”と呼ばれる山がある。そこには旧日本軍将兵の遺骨が大量に野ざらしになっていて、日本に帰る日を待っている」

 教えてくれたのは、ミャンマーで農業指導をしている我妻豊氏(六四)だった。 我妻氏は、ミャンマーのケシ不法栽培地域の住民に農作物への転作を指導する内閣府認証NPO法人「アジアケシ転作支援機構」の理事長である。

 我妻氏は一九九一年に、シベリア抑留経験のある父親から「ミャンマーに行って、ビルマ戦線で戦死し、遺骨すら帰らなかった兄の慰霊をしてきてほしい」と頼まれ、初めてミャンマーを訪問。現地住民らから、悲惨な戦争の実態や、多くの日本兵の遺骨がいまだに日本に帰れずにいる事実を知らされ、大きな衝撃を受けたという。

 「それ以来、ミャンマーに入れ込み(笑)、かれこれ三十年。インパール作戦に参加した部隊の兵士の遺品の収集や、ミャンマー各地の旧日本兵の慰霊を重ねる一方、厚労省などと組んで、ケシ対策の農業支援や、ミャンマーの緑化事業などを手がけてきました」

 もともと、我妻氏に蛆山の存在を伝えたのは、カチン州の七つの部族の一つ、カク族の長老だった。長老とは農業指導の過程で懇意になった。

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