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【編集者のおすすめ】『荒城に白百合ありて』須賀しのぶ著

■国の終わりを生き抜く運命

 たったひとり、自分をわかってくれる人がいたならば-。孤独を極める現代、そんな切実な願いを抱く人は少なくないはず。本書は幕末という動乱の中で、まさに互いにとっての「たったひとり」を見つけた男女の物語です。

 黒船が浦賀に来航し、国が揺れていた頃、江戸定詰の会津藩士の長女として生まれた青垣鏡子は、幼い頃から生の実感が持てぬ少女でした。本心を隠して会津の女として生きるはずだった彼女の運命が変わったのは安政の大地震の夜。燃え盛る町を見た鏡子は、心の奥底で望んでいた「終わりが来た」ことを悟るのです。

 一方、薩摩藩士の岡元伊織は大地震の夜に、ひとり彷徨(さまよ)い歩く美しい少女を見つけます。あやかしのような少女に「このくには、終わるの?」と尋ねられた伊織は、彼女が自分と同じこの世になじめぬいきものだと気づきます。

 時代が時代であるため、二人が会うのは三度だけ。けれど、心の中には常に相手だけの場所があり続けました。鏡子と伊織は出会わなければ、穏やかに生を終えられたでしょう。けれど漠然とした無力感に苛(さいな)まれる中で、互いの存在こそが生きる支えになっていたことも確かなのです。

 著者は『革命前夜』や『また、桜の国で』などヨーロッパを舞台にした物語を多く書かれていますが、どの作品も時代が揺れ動くときに人々が何を支えにし、どう生きるかが描かれています。

 幕末という世界の終わりを生きぬいた二人の運命を、ぜひ見届けてください!(KADOKAWA・1700円+税)

KADOKAWA文芸局・今井理紗

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