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【ビブリオエッセー】瑞々しく美しい描写が全編に 「秘密の花園」バーネット著 土屋京子訳(光文社古典新訳文庫)

 子供の頃、絵本で見た「秘密の花園」に強い憧れを抱いた。いつか自分もバラの咲き乱れる洋館に暮らし、丹精こめて庭の手入れをしたいなどと思い描いたこともある。

 現在は和風の家に住み、絵本のような花園は持ち合わせていないが、毎年、バラ園へ足を運ぶのは、もしかすると子供の頃の憧れの延長線上なのかもしれない。

 この作品を知らない人はおそらくいないのではないか。「題名は知っている」「絵本は読んだ」という人が大半だろう。今さら大人が読む本ではないと思っている人もいるだろう。しかし私は大人になってから読み、そのうっとりするほど瑞々しく美しい描写に深い満足感を得た。

 インドで両親を亡くし、英国ヨークシャーにある叔父の屋敷に引き取られた主人公メアリ。そこには叔父が妻の死後、長く閉ざしていた秘密の花園があった。メアリは花園の存在を知り、その再生を夢見て庭仕事を始める。相棒は動物と話ができる不思議な少年ディコン。叔父の家には自分の病を恐れて引きこもり、寝たきりの従兄弟コリンがいた。コリンはメアリや花園に出会い、その恐怖が思い込みだったことを知る-。

 素朴な人々や自然とのふれあいの中で、不愛想でつむじまがりな少女とわがままでひねくれものの少年が、庭の再生とともに心身を回復させていく物語だ。メアリがコマドリとの交流で心を開いていく場面は明るい気分になった。

 この本を読むと生きる喜びの実感が伝わり、子供にとって何が大切なことなのかが、よくわかる。大人にこそ読んでほしい色あせない名作だ。

 堺市西区 北埜めぐみ 48

 【ビブリオ・エッセー募集要項】本に関するエッセーを募集しています。応募作品のなかから、産経新聞スタッフが選定し、月~土曜日の夕刊1面に掲載しています。どうか「あなたの一冊」を教えてください。

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