PR

ライフ ライフ

【聞きたい。】坂井希久子さん 『妻の終活』

坂井希久子さん
坂井希久子さん
その他の写真を見る(1/2枚)

 ■家族の心がふれあう瞬間

 「じじいとばばあの余命一年ものです」-。ご自身のSNSでは少しちゃかして作品を語るが、「若い男女より、酸いも甘いもかみ分けたじじいとばばあの余命一年のほうが語ること多いし、圧倒的におもしろいでしょ」と自信ものぞく。

 主人公の一ノ瀬廉太郎は間もなく70歳。製菓会社で定年後も嘱託として働いている。結婚42年、家ではわがまま放題で家事、育児は妻、杏子にまかせきりだったが、杏子が末期がんで余命一年の宣告を受け、廉太郎の苦悩の日々が始まる。

 「廉太郎と同じ年の父がモデルです。大多数の人が頑固な昭和の父親やおじいさんから頭押さえつけられてきたと思う。これはちょっとした復讐(ふくしゅう)かな(笑)」

 母を先に亡くし、父と娘二人の家族構成も同じだけに、「廉太郎たちの性格を作るのも苦労はなかった。父との関係、母の死も私の人生にすごく影響しているので一度整理してみようかと。家族は近しい存在でも尊重し合えるといい。家族の心がやっとふれ合えた瞬間を書きたかったんです」。

 ただ、その瞬間に至るまでの廉太郎の言動には、わが身を振り返ってヒヤリとする読者も多かろう。

 「(そういう人に)身につまされてほしくて書いた。改心する人、娘目線で読むのがつらい人、バリバリ働いて廉太郎化しているという女性の反響も。それぞれ思う存分反省したり、腹立てたりしてほしい」

 モデルの反応はないが、「とりあえず読んでくれれば…。読んだぞ、あそう、でいい」とうなずいた。

 さて、坂井さんといえばかつてSMクラブの女王様という異色の経歴もある。青春小説、時代もの、ドロドロ恋愛系など作品が多彩なのもその経験ゆえ?

 「役に立ってると思う。人を見る目が変わって、人間って多様性があっていいなと。もう人類愛ですね」

 本書で久しぶりに泣いたのも、人類愛のなせる業だったか。(祥伝社・1400円+税)

 三保谷浩輝

【プロフィル】坂井希久子さん

さかい・きくこ 昭和52年、和歌山県生まれ。同志社女子大卒。平成20年、『虫のいどころ』でオール読物新人賞、著書に『居酒屋ぜんや』シリーズ、『17歳のうた』『愛と追憶の泥濘(ぬかるみ)』など。

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ