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【脳を知る】老老介護、「物忘れ」でも叱らず介護サービス利用を

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 「母に物忘れがあって、いつも父に叱られているのです」

 80歳の女性が、別に住んでいる娘さんに連れられて、物忘れ外来を受診されました。娘さんによると、お風呂の湯をためる時、湯の蛇口を回すのを忘れて水をためていたり、水を出しっぱなしにしたり、買い物にいっても、同じものばかり買ってきて、同居する夫に叱られてばかりいるとのことでした。

 また最近は、掃除や洗い物もうまくできなくなってきたため、腰の悪い夫がなんとかしているようでした。認知機能を調べる検査では、30点満点中19点と低下しており、MRIでは海馬(かいば)の萎縮がみられました。アルツハイマー型認知症と診断して、認知症の薬を始めると同時に、介護保険も申し込んでもらい、介護サービスを受けてもらうことにしました。

 介護する夫も高齢で腰が悪く、老老介護になりますので、ヘルパーさんに入ってもらったり、デイサービスやショートステイを利用したりするためです。また夫には、物忘れは病気からくるものなので、叱らないように娘さんに言ってもらうようにしました。

 老老介護とは、65歳以上の高齢者を同じく65歳以上の高齢者が介護している状態のことで、今回のように「高齢の夫が高齢の妻を介護する」とかその逆とか、「65歳以上の子供がさらに高齢の親を介護する」などの場合です。

 最近では非常に増えており、在宅介護している世帯の半数以上に当たる51・2%が老老介護の状態にあるという報告もあります。さらに、認知症の方を、軽度の認知症の方が介護する認認介護というのも、物忘れ外来をしていますと、少なくありません。

 介護する方が、まだ若い場合は、なんとか在宅で介護することができますが、高齢の場合は、介護する側もなんらかの病気を持っていたり、足腰が悪かったりして肉体的な負担がありますし、同時に精神的な負担も多くなり、ひどい場合はどちらの病状も悪化して「共倒れ」状態になる危険性があります。

 介護者が男性である場合、今まで奥さんにまかせていた家事をしていくとなると、よけいに負担になったり、認知症と気付かず、うまくいかないと叱ったりする場合もあります。

 そういったことは高齢者虐待にもつながる恐れがあります。そのため、老老介護の場合は、介護保険を申請して、介護サービスを受けることが大切です。

 介護する側は、それが高齢者の場合は特に、人に迷惑をかけてはいけないと思ったり、人に知られたくないと思ったりして、介護サービスを利用しようとせず、ひとりで抱え込んでしまうケースがあり注意が必要です。

 おかしいなと思ったら、できるだけ早く医療機関や、地域包括支援センターなどに相談してみてください。

(和歌山・橋本市民病院 脳神経外科部長 大饗(おわい)義仁)

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