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【深層リポート】91歳母あやめて焼身自殺 介護に疲れた60歳男性が直面した現実

 当時の民生委員は、介護保険を利用しなかった男性を「真面目過ぎて自分で抱え込んだのだろう。利用を強く勧めればよかった」と悔やむ。

 母親に「もう死にたい」と懇願された可能性も否定しない田中さんは「どちらにしても、死んでおわびするほどつらかったのでしょう」と、男性の苦悩を代弁する。

 東日本各県の現場を記者が掘り下げたリポートを毎週日曜日に掲載します。

■介護保険と介護事件 介護保険は高齢化に対応して40歳以上が加入する制度で、昨年4月時点の65歳以上加入者は約3500万人。一方、厚生労働省の平成28年度調査では、在宅介護での高齢者虐待は1万6770人に上った。男性と母親のように介護保険制度が活用されていない実態も浮かび、うち28%は要介護認定申請すらしておらず、認定されていても約14%はサービスを受けていなかった。

【記者のひとりごと】 私も男性と同い年で、2人暮らしの母を6年前に亡くした。介護する間もなかったが、もし下の世話をすればどうだったかと、今も考える。子とはいえ男の私が母の下を清拭(せいしき=病人などの体をふいて清潔にすること)するのは母にも苦痛だったろう。

 それに、大変な苦痛を伴うとされる焼身自殺を、なぜ男性は選んだのか、心が痛み続け、2人への供養の思いで取材した。盆明けに自宅を訪ねると、庭に白い彼岸花が2人を弔うかのように咲いていた。きちんと手入れされた母屋や庭の様子、親類や知人の話から、男性の人となりが少し分かった気がした。

 「2人のためにも介護問題の難しさを知らしめて」という親類に教えてもらった墓には、真新しい塔婆が2本並んでいた。眼下に輝く日本海を眺めながら、再び親子で穏やかに過ごしているであろうこと、そして姉が見た男性の死顔が「すすけていても苦しんだようには見えなかった」ことに、救われた気がした。(八並朋昌)

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