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【書評】書評家・関口苑生が読む『メインテーマは殺人』アンソニー・ホロヴィッツ著、山田蘭訳 してやられた驚きの真相

『メインテーマは殺人』
『メインテーマは殺人』

 本格謎解きミステリというのは、おおむねまず(殺人)事件が起こって、誰が? どうやって? なぜ? の三つの謎が解き明かされることで進行する。

 とりわけ注目されるのが犯人は誰かという点で、これは作者と読者の知恵比べ的な側面もあり、この謎に特化して書かれた作品は「犯人当てミステリ」と呼ばれる場合もある。

 とはいえ、そこには暗黙の約束があって、たとえば真相を合理的に導くすべての資料と手がかりが、包み隠さず小説上に開示されていなければならないというのもそのひとつ。これを怠った作品はアンフェアと断罪される。つまり、作者は読者に難解だが決して不可能ではない謎を提示して、これを解いてみろと挑戦し、読者は勘ではなく、与えられた手がかりから論理的に答えを導くというわけだ。

 本書『メインテーマは殺人』は、まさしくこの犯人当てミステリのルールにのっとった、しかもきわめてフェアな、謎解きの魅力が全開の一作となっている。物語は、資産家の老婦人が自分の葬儀の一切合切を手配したその夜、何者かによって絞殺されるという事件から始まる。もしかして彼女は、自分が殺されることを知っていたのか? あるいは、それとも…。

 派手さには欠けるかもしれないが、これはこれで何とも奇妙で強烈な謎である。加えて事件の記録者で、物語の語り手でもある「わたし」は、作者のホロヴィッツ自身という趣向が凝らされている。現実社会での作者の仕事ぶりや生活が、ほとんどそのまま描かれているのだ。

 そこへある日、刑事ドラマの脚本を書いている時に知り合った元刑事(これは架空の存在)で、現在はロンドン警視庁の顧問をしている人物が訪れる。彼いわく、実はいま不思議な事件を捜査している。ついてはその事件を担当している自分を取材して、本にしないかというのである。要するに自分はホームズ役をやるから、お前はワトソン役になれとの提案だった。

 かくしてふたりは事件の謎に迫っていくのだが、事の真相と犯人が明らかになった瞬間の驚きというか、見事にしてやられた悔しさと爽やかさは半端ではなかった。そう、手がかりは全部提示されていたのにだ!(創元推理文庫・1100円+税)

 評・関口苑生(書評家)

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