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【ロングセラーを読む】『ロウソクの科学』ファラデー著、竹内敬人訳

『ロウソクの科学』ファラデー著、竹内敬人訳
『ロウソクの科学』ファラデー著、竹内敬人訳

 ■未来の科学者生み出す名著

 リチウムイオン電池の開発でノーベル化学賞の受賞が決まった吉野彰さんが、記者会見で、化学に興味を持ったきっかけとして挙げた一冊の本が話題となった。

 『ロウソクの科学』がそれだ。英国の科学者、マイケル・ファラデー(1791~1867年)が、1860年の「クリスマス・レクチャー」(英王立研究所が毎年開催している青少年向けの科学講演)で講演した全6回が収録された。1861年に刊行されて以来、世界中で翻訳され、日本語訳で最も歴史ある岩波書店版は1933年に刊行。今回紹介する新訳版は、より原典に則した翻訳になり、現在の科学的常識との差を埋める訳注やファラデーの伝記も収録している。旧訳、新訳版あわせて73万部。吉野さんの会見翌日からは「子供や孫に読ませたい」などと注文が殺到したという。

 2016年にノーベル医学・生理学賞を受賞した大隅良典さんら世界的科学者の多くも、少年少女時代に同書に接し科学者を志したが、なぜ魅了されたのか。

 まず、ロウソクという身近な題材から、その作り方、燃え方など、実に多角的な科学的切り口を紹介したことや、軽妙な語り口で実際に行われていた実験が、文字上でもライブ感をもって語られており、科学的興味がかき立てられるのが第一の魅力だろう。

 また、ファラデーの人物自体の魅力も、人々をひきつけているのかもしれない。ファラデーは貧しい家庭に生まれ、読み書き程度の教育しか受けていなかったというが、努力と情熱で人生を切り開いた。彼の人生自体が、無数の失敗から一つの成功を導く「実験」のようでもある。岩波書店のPR担当者は「こうしたファラデーの人生を知ると、親しみに畏敬の念が加わる。身近な疑問と探求を通して『科学の精神』を伝えてくれる」と話す。

 当たり前のように使われているスマートフォンも、電気自動車も、吉野さんが本書を読んで科学者とならなければ、存在しなかったかもしれない。今、世界中で本書を読んでいる子供たちが、将来何を生み出すのだろう-。本から広がる未来を思うと、何だかワクワクしてくる。(岩波文庫 720円+税)

 加藤聖子

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