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【文学五輪】米作家スティーヴ・エリクソンさん 現実と虚構のはざま、幻想的に

平成28年に2度目の来日。「東京に“戻れる”のがうれしかった」と話したスティーヴ・エリクソンさん
平成28年に2度目の来日。「東京に“戻れる”のがうれしかった」と話したスティーヴ・エリクソンさん

 時空を自由自在に移動する語りで、現実と虚構のはざまにあるような幻想的な世界を描く。米作家、スティーヴ・エリクソンさん(69)の作品はガルシア・マルケスらのラテンアメリカ文学になぞらえて“北米マジックリアリズム”とも形容される。存在しないはずのものを実際に今そこにあるように見せる「幻視力」は読者の現実感覚を揺さぶる。(海老沢類)

 初期の代表作『黒い時計の旅』(1989年)は、現実の20世紀とヒトラーが生き残った幻の20世紀とが絡み合う物語。米独立宣言を起草した第3代大統領トーマス・ジェファソンとその美しい奴隷の愛を軸にした『Xのアーチ』(93年)でも、大胆な設定と奔放な想像力で、改変されたもう一つの歴史を語る。慶応大の巽孝之教授(米文学)は「現実と幻想がなし崩しになり、歴史も改変される。そんなマジックリアリズム的な世界を成り立たせている英語の文章がまた美しく心地良い。米国を中心とした世界の歴史をすくい取る壮大なビジョンをあわせ持つのも魅力」と語る。

 エリクソンさんは西海岸のカリフォルニア州に生まれ、カリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)で映画とジャーナリズム論を専攻した。映画や航空宇宙産業の発展で急変する大都市のロサンゼルスで育った体験が、虚実が入り乱れる混沌(こんとん)とした作品世界と響きあう。平成28年に来日した際、こう語っていた。

 「一方には映画のセットがあって昔のカウボーイタウンのような虚構の情景が広がる。そこから歩いて数分の距離には未来志向のロケット実験施設がある。普通なら一緒にあり得ないようなものが同居する奇妙な風景を、当たり前のものと受け止めて育った。自分の小説でもそういうことがごく自然に起こるのです」

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