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【柴門ふみの人生相談】不妊治療 続けるうちにもやもや

相談

 38歳、2年ほど不妊治療をしています。体外受精までしておきながら、自分はどうしたいのか分からなくなり、少し疲れてきました。

 子供が欲しい気持ちは嘘じゃない。なのに、体質改善はできる範囲でしか取り組まず、夫や親からのプレッシャーもそこまでない。むしろこの年齢で妊娠したら色々大変だろうなあ、と思うくらい。なのに、妊娠しないとすごくがっかりし、イライラします。

 元々あまり悩まない性格ですが、今の私は高いお金をかけて一体何がしたいんだろうとモヤモヤし、すごく居心地が悪いです。今ある凍結胚がなくなったら不妊治療をやめようと決めています。今後、妊娠しても、妊娠を諦めても、どんな風に現実を受け止めるのがいいのでしょうか。できれば落ち着いて楽しくその時を迎えたいです。

回答

 人生は思いもかけぬ出来事の連続です。病気や事故も突然身に降りかかってきますし、予期せず愛する人を失うこともあります。それらは自分が努力しても悩んでもどうにもならないものばかりです。

 不妊治療もまた、本人の努力ではどうにもならないと思います。だったら結果が出るまでは期待もしない、悲観もしない、という心持ちで過ごすのが一番かと思います。

 例えば、受験を終えて合格発表までの時間もそうです。悩んでも祈っても、もう答案を書き直すことはできない。アナタが知らないだけで結果はもう出ていて動かせない。なので、合格を夢見てはしゃいでも不合格を恐れて不安におののいても、「結果」は同じ。だったらはしゃぐのも落ち込むのも、結果が出てからすればいいことなのです。それまでは、淡々と日常を送るのがよろしいかと思います。「今ある凍結胚がなくなったら不妊治療をやめようと決めている」とあるので、相談者の方も、すでにそのことに、うすうす気づかれているのではないでしょうか。妊娠しなかったら、思いっきり落ち込んでそこから気持ちを切り替え、心を立て直してゆく。妊娠すれば、手放しで喜べばいいのです。そしてそれまでの日々は、考えすぎずに日常を淡々と、けれど丁寧に生きてみてください。

 中原中也という詩人は、最愛の息子を生後間もなく亡くし、その悲しみの後に「喜び過ぎず 悲しみ過ぎず テムポ正しく握手をしませう」と詠(うた)っています。

 大きな悲しみや落胆を救ってくれるのは、日常の些事です。生きてゆくための細かな些事を丁寧にこなしてゆくしか、悲しみを薄めることはできない、と夭折(ようせつ)の詩人が教えてくれています。私もこのフレーズを口ずさんで、人生のいろいろを乗り越えてきました。

回答者

柴門ふみ 漫画家。昭和32年生まれ。代表作は講談社漫画賞の「P.S.元気です、俊平」のほか、「東京ラブストーリー」「恋する母たち」(ともに小学館)など。近著に「そうだ、やっぱり愛なんだ 50歳からの幸福論」(角川文庫)など。故郷の徳島市観光大使も務める。

相談をお寄せください

 住所、氏名、年齢、職業、電話番号を明記のうえ、相談内容を詳しく書いて、〒100-8078 産経新聞文化部「人生相談 あすへのヒント」係まで。

 〈メール〉life@sankei.co.jp

 〈FAX〉03・3270・2424

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