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【話の肖像画】元厚生労働事務次官・村木厚子(63)(5)貫いた「最低限の目標」

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 〈郵便不正事件の取り調べでは、納得のいかない調書にはサインしないことを貫いた〉

 プロのボクサーである検察官と、アマチュアの私がリングに上がって試合をする。セコンドも、レフェリーもいない状況。弁護士の弘中惇一郎さんが「勝ちはない。負けなければいい」とストレートに言ってくれたので、気が楽になった。「やってないことをやったと言わない」というのを最低限の目標に設定できたのが良かった。一度負けるとどんどん自信がなくなり、負け癖がついてしまったかもしれない。

 興味深いのは、厚生労働省で関係者として事件の証言をした人は10人で、5人が「私がやった」という調書にサインし、5人が拒否しているんですよね。権力を持ったプロとアマチュアを土俵に上げると、無実でも半分は検察側が勝っちゃう。冤罪(えんざい)を生みやすい構図がよく分かりましたね。平成24年のパソコン遠隔操作事件でも、誤認逮捕された4人のうち2人が自白していましたよね。やっぱり半分なんだと思った。プロに弱点を攻められてギブアップする。ある部下は「課長(村木さん)がやったということでないなら、おまえの責任でいいんだな」と言われているんです。

 〈拘置所で差し入れられた証拠書類を読み込み、フロッピーディスクに記録された偽造証明書の作成時期の矛盾を暴いたことで、検察側のストーリーが崩れ、形勢が逆転する。後日、検察側による作成時期の改竄(かいざん)が判明し、主任検事らの逮捕につながっていく〉

 弁護団に「一番暇なのは、村木さん。一番役所の仕組みを知っているのも村木さんなんだからね」と言われ、調書が取られた順にノートに書いていくと、検察のストーリーが浮かび上がってきたんですよ。嘘が交じっていることは分かっているわけで、物的証拠があるものに印をつけ、時系列でいつ何があり、これだけは「本当」らしいということを全部固めた。それでフロッピーの日付の意味に気づけた。

 思い込みを排除するため、証拠を1回読んだら、1日置いて、もう1回読むようにしていた。フロッピーの部分も1回目は見過ごし、2回目に「日付が違う。検察のストーリーより前に偽造証明書が作られている」と発見できたんです。組織の仕組みや人間関係を一番理解しているのは当事者、でも何が裁判で使えるかを判断するのは弁護士。弁護士の人選は大事です。

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