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【ビブリオエッセー】わが「ダザイスト」宣言 「斜陽」太宰治

 一時期ですが、私は三度の飯より太宰治の小説を読むことに生き甲斐を感じていた時期がありました。随分昔の話です。家内にあきれられて、「そんなに太宰の小説ばかり読んでいると早くボケるよ」とよく言われました。

 そんなある日、子供が私の読んでいる太宰の単行本にコーヒーをこぼしてしまいました。それを見た家内や子供は一瞬、叱られると思ったそうです。当の私は子供に「よくやった」との思いでした。ずいぶん手垢がついて印刷のにおいも薄れてきたので買い替えようかと迷っていて、ついテーブルの上に置き忘れていた本だったのです。さっそく新しい太宰本を買い、大満足でした。

 ところで太宰の全作品の中で私が最も優れていると思う作品は『斜陽』です。よく知られているように、これは実在の女性、太田静子の日記をもとに小説化されました。亡くなる前年の昭和22年に発表され、主人公「かず子」、その弟「直治」、作家でかず子の恋人「上原」のとりわけ三人の登場人物を中心にした構成で、この三人が太宰の分身であるとも言われています。

 私見ですが、「恋と革命のために」生きたかず子に、太宰が執筆当時に知り合い、その後、一緒に玉川上水に入水した山崎富栄の影が色濃く反映されているのではと思えてなりません。

 かつては太宰の記念館「斜陽館」の館長になりたかった私。夢はかないませんでしたが前回の『晩年』に続いての投稿。心に響き続ける太宰文学の代表作への思いを改めて書かせていただきました。

 大阪府吹田市 井内雅仁69

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