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【近ごろ都に流行るもの】「認知機能検査・対策問題集」 高齢者の運転免許更新、議論呼ぶ 

「これで安心!」「自主返納を考える前に」などの言葉が書かれた、認知機能検査・対策問題集の一例
「これで安心!」「自主返納を考える前に」などの言葉が書かれた、認知機能検査・対策問題集の一例
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 「このまま車の運転を続けていいのか…」。今、多くの高齢ドライバーとその家族が直面している問題だ。4月に発生した東京・池袋の暴走死傷事故も記憶に新しい。運転免許返納を促す声が高まるが、地域に交通の便がないなどの事情で免許を手放さない高齢者も依然として多い。75歳以上の免許更新時に義務づけられた「認知機能検査」は昨年、200万人以上が受検。「対策問題集」が続々発行され、認知機能チェック付きのドライブレコーダーも登場している。対策してまで運転を続けるのか、キッパリ返納か…。日本社会が揺れている。(重松明子)

 「運転免許認知機能検査の通知が届いた母親が、とんでもない本を買おうとしていました。『運転免許認知機能検査合格ドリル』。…意味ないだろ! 検査の意味!」

 今夏、ネットの「ヤフー知恵袋」にこんな相談が投稿された。「本を暗記できた時点で認知症ではありません」「認知症だったら本の購入など思いつかないでしょう」など、回答の大半は息子の過剰反応をなだめる声だった。

 動物、楽器、文房具、昆虫などが1セットになったイラストを何枚か見せられた後、「何が描かれていたのかを思い出して、できるだけ全部書いてください」と指示される認知機能検査。「時間の見当識」「手がかり再生」「時計描画」の3項目について測定される。所要時間は約30分。100点満点中49点未満だと「記憶力・判断力が低くなっている」として医師の受診が必要となり、認知症と診断されれば免許は取り消しか、停止となる。

 認知機能検査は、平成29年施行の改正道路交通法により75歳以上の免許更新で義務化され、昨年は202万人が受検した。今後も増加が予想されており、巨大マーケットとしての“魅力”も浮かび上がる。

 出版関係者によると、対策問題集は義務化翌年の昨年5月に発売された「運転免許認知機能検査まるわかり本」(メディアパル)を皮切りに続々発行され、今年の新刊は10冊以上。出題例は警察庁のウェブサイトでも見ることができるが、「ネットでの情報収集が得意ではない高齢者の不安が、対策問題集の需要につながっている」。

 そう指摘するのは、今月発売された「みるみるわかる運転免許認知機能検査 令和版」(990円)の発行元である三才ブックスの編集者、近藤理さん(45)だ。同社からは2冊目の対策問題集で、抗加齢(アンチエイジング)研究で知られる白澤卓二医師の監修のもと、認知症予防に有効な食品を掲載して特色を打ち出している。

 近藤さんは「自家用車がなくても生活に困らない東京などの都心部と違い、都市周辺部や地方の事情は切実で、なかなか自主返納に踏み切れない。ならば食と生活習慣に気を配り、健康な状態で安全運転を続けてもらいたい」と話す。ロードサイドの郊外型書店で好調に売れており、購入層の中心は75歳前後、男女比は半々という。

 損保ジャパン日本興亜は、運転診断機能を搭載したドライブレコーダーによる「自動車保険の安全運転支援サービス」を一昨年に開始。すでに10万台に導入されている。

 「高齢ドライバーによる事故のニュースを見て、心配した子供が親に勧めるケースが多い」と広報担当者。走行データから顧客の運転特性を分析し、アクセル、ブレーキ、ハンドリングの運転技術を点数化。同年代平均との比較、長期的な運転能力の変化が客観的に示され、高齢ドライバーにありがちな「過信」対策になりそうだ。

 認知機能チェックや視覚機能トレーニングを自宅パソコンで行えるメニューも備えた。「点数を意識して運転が注意深くなり、スピード超過が抑えられるなどの効果が表れています」という。

 池袋の暴走事故をめぐっては今月、母子2人を死亡させた88歳の男性が、手足が震えたり筋肉がこわばるパーキンソン症候群に罹患(りかん)していた疑いがあることが明らかになった。

 「認知」だけでなく、個人差の大きな「身体」機能検査も必要ではないのか。

 世界に先駆けて超高齢社会を迎えた日本。人生100年時代を見据え、お年寄りの自立や社会活動の継続が推奨される一方、“免許返納圧力”が強まる矛盾の中にある。免許更新期間の短期化、限定条件付き免許など海外の事例も参考に、冷静な議論の場を増やしていくべきだろう。

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