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【台風19号】完成した堤防も決壊 遅れる河川整備

 台風19号による堤防の決壊は、既に完成済みの堤防でも起きた。河川全体の治水工事が終わっていなかった影響が大きいといい、関係者は「堤防さえできればすぐに安全というわけではない」と指摘。国の河川整備は予算減少を背景に思うように進んでおらず、専門家は予算を拡充して急ぐべきだとしている。

 国が直轄管理する河川で決壊した堤防は5県7河川の12カ所。このうち千曲川(長野市)と阿武隈川(福島県須賀川市)、吉田川(宮城県大郷町)の計3カ所の堤防は、いずれも整備が終わり完成していた。

 国の堤防の整備計画は、戦後に起きた最大規模の洪水を河川ごとに想定し、当時と同じ水量に耐えられる高さや幅などを算出。千曲川は昭和58年の台風、阿武隈川は61年の台風、吉田川は22年に甚大な被害が出たカスリーン台風を想定して堤防を設計していた。

 国交省は、今回の水量が想定を超えたかは検証中で、堤防の決壊原因は分かっていないという。ただ、現場を所管する同省地方整備局は「川全体の整備が完了していなかったためだ」と口をそろえる。

 河川整備は堤防のかさ上げや補強のほか、狭い部分の拡幅、川底の掘削による水深の確保、ダムや遊水池の整備など幅広い。全体を20~30年で完了し流せる水量を増やしたり、水位を下げたりして洪水に備える。

 だが決壊した3カ所周辺では、川底の掘削や、川幅が狭くなる場所の対策などをまだ実施していなかった。「堤防だけが完成していても治水レベルが十分でなかった」(北陸地方整備局)ことから、決壊した可能性が高いとみている。

 3カ所はいずれも川の上・中流域で、「河川整備は下流側から進める」という原則が影響した可能性もある。下流側は市街地で人口が多く洪水時の被害が大きいことや、上流を先に整備すると水量が増えて下流の危険が増すことが理由で、上流側は後回しになる。今回の他の洪水被害も上・中流域が目立った。

 治水事業は多額の費用が必要だ。国の当初予算は緊縮財政の影響で平成9年度の1兆3698億円をピークに減少。民主党政権期に急減し、近年はやや回復したが、今年度で8471億円にとどまる。さらに近年は大規模な洪水が多発し、被災地の復旧に予算が集中。「その結果、他の場所の整備が遅れることになる」(国交省)という。

 国が整備が必要と判断した全国の直轄河川の堤防は計約1万3400キロで、このうち30年度末で約3割が完成していない。京都大の中川一教授(河川防災学)は「気候変動で洪水が大型化しており、このままでは被害拡大が続く。国は予算を拡充し、河川整備全体を加速させなくてはならない」と指摘している。

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