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【ビブリオエッセー】天使の翼が見えないかな 「つばさものがたり」雫井脩介(角川文庫)

 テレビドラマ化された『火の粉』や『仮面同窓会』の作者であることからミステリー小説と思い込み、手にした一冊。しかし、その期待は見事に、あまりにもすてきに裏切られた。

 主人公、小麦は家族の希望の星。生前、父が母に語っていた「夫婦で小さなケーキ屋をやろう」との夢をかなえるため、パティシエへの道を目指す。しかし、ガンの再発による焦りから、師匠に背を向ける形で無謀ともいえる独立をした。

 一方、小麦の兄の一粒種である叶夢はいわば“不思議ちゃん”。彼だけにしか見えない「天使修行中」のレイが唯一の友達という設定だ。レイは生物のオーラをエネルギーとしている。そのレイを、【霊】と大人感覚で受け止めていた私は、一挙に夢の世界に誘(いざな)われた。

 周囲も徐々にレイの存在を認め始める。そんな中、父とレイの口論が何ともユーモラスである。「パパのオーラは臭くて食えないってレイが言っている」と叶夢。「何だと!」。ただ臭いのはパパのオーラのみで、全編にあふれ漂うケーキの甘い香りは大いに想像力と食欲をかき立ててくれる。加えて登場人物の愛と絆、親子、兄弟、友人。叶夢とレイの奇妙な同志愛は私の心をも温かく、優しいものに導いてくれた。

 読後、たまらなくケーキが食べたくなった。そして、天使の翼が見えないかなと、キョロキョロする自分がいた。

 レイ、天使たち、おばさんのオーラを食べにきていいよ。遠慮しなくていいよ。え、そうじゃない、古いのはおいしくないって?

 大阪府摂津市 岬かずみ 70

【ビブリオ・エッセー募集要項】本に関するエッセーを募集しています。応募作品のなかから、産経新聞スタッフが選定し、月~土曜日の夕刊1面に掲載しています。どうか「あなたの一冊」を教えてください。

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