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【書評】『日本近現代史講義 成功と失敗の歴史に学ぶ』山内昌之、細谷雄一編著 最新研究で150年史を一望

『日本近現代史講義』(中公新書)
『日本近現代史講義』(中公新書)

 「近い時代になると、史家の公平な記録は耳にすることがなく、自(おの)づから自国の秀(すぐ)れた点を自慢し、他国の劣った点をあげつらうことが起った」

 これは本書の編者の一人である山内昌之が、唐代の歴史家・劉知幾(りゅう・ちき)から引いた名言である。すでに30年以上にわたって日本と中国・韓国などのあいだで続いている「歴史認識の違い」をめぐる論争も、その根源はまさにこの点につきるのではないだろうか。

 本書は、日本が近代化を始めてからの150年に及ぶ歴史を、日清・日露戦争や2度の世界大戦、さらには戦後の日中・日韓関係など、その時々の時代を画したテーマについて、それぞれの研究における第一人者によって最新の知見に基づきながらも、実にわかりやすく解説された珠玉の論集である。

 それは瀧井一博による「立憲革命としての明治維新」に始まり、中西寛による「ポスト平成に向けた歴史観の問題」で締めくくられるが、いずれも第一級の論説といって過言ではない。

 特に、これまで「定説」とされてきた学説や議論などがここでは見事に論破され、読む者の目のうろこを落としてくれるところがありがたい。

 紙幅の関係ですべてを紹介できないのが残念であるが、たとえば東アジアにおけるパワーバランスに欠かせない「満韓一体論」が本格的に始まった日清戦争は、朝鮮戦争が正式に終戦を迎えていない今日においてもまだ「終わっていないともいえようか」と問いかける岡本隆司の第2章などは衝撃である。

 さらに日本による植民地支配をめぐる日韓の歴史認識問題についても、そもそも植民地とは何であり、その地域差や時代差などをしっかり探究すべきであると説いた木村幹の第11章も実に刺激的だ。

 本書のもう一人の編者である細谷雄一が最後に述べているとおり、日本人に限らず21世紀のすべての人々にとって「繰り返し歴史に立ち返り、これまで先人が歩んだ道のりを確かめ、その選択と決断の困難を理解することが不可欠」になるのではないだろうか。

 令和という新しい時代を迎え、近現代史を振り返るうえで本書は不可欠の作品といえる。(中公新書・900円+税)

 評・君塚直隆(関東学院大教授)

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