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【話の肖像画】映画監督・是枝裕和(57)(4)自身の母、作品に重ね

 母は俗っぽさのある、ある意味「世間」そのものみたいな人でした。あの映画に登場する主人公の母親は、かなり自分の母親に近いと思います。

 あと母はすごく現実的な人でしたね。小学校入学式の日にいじめっ子がいて、いきなり体の小さい子をいじめていたので、僕が「やめろよ」と止めに入ったんですよ。そしたら、逆にそのいじめっ子に顔中ひっかかれたんですよね。いまだに傷が残っていますけれど。

 保健室で顔中に赤チンを塗られて家に帰ったら、母親に「そんな無駄なことをするな。ケンカなんて止めなくていい」って言われたんです。母親は、損するからやめろという現実的な人だった。自分は良いことをしたと思っていたのに、全然ほめられませんでした。

 〈小学生のときは学級委員をしたり、優等生だった〉

 嫌みなほどに大人びた、かわいげのない子供でした。先生の信頼も厚くて、“あいつ鼻持ちならないな”って感じです。小学校のときがいちばん大人だったんじゃないですかね。いまどんどん子供に返っていますけれど。「海街diary」(27年)で四女のすずが鎌倉に来てから子供時代を取り戻すように、当時の欲求をいま果たしている感じです。

 あと、母親からは「とにかく公務員になれ」とよく言われていました。ちゃんとボーナスが出るし、堅い仕事につけという感じですね。安定したかったんじゃないですかね。自分の人生が安定していなかったから。いつも偉人の伝記ばかり買ってきていましたし、よほど息子に期待したんじゃないですか。祖父も父もあてにならないから。せめて息子だけは、というのがあったのかもしれません。(聞き手 水沼啓子)

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