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【日曜に書く】日本の色はすばらしきかな 論説委員・山上直子

 知る人ぞ知るのは2月に東大寺で行われる「修二会(しゅにえ)(お水取り)」との関わりだ。舞台となる二月堂の本尊・十一面観音にささげるツバキの造花を僧侶らが作るのだが、その鮮やかな紅色の和紙を染めてきたのも吉岡さんだった。取材のたびに学んだのは日本の色の豊かさである。

赤は生命の色

 ところで「紅絹(もみ)のはたき」と聞いて、懐かしいと思う人はどのくらいいるだろう。

 子供のころ、祖母が古い着物の裏地だったか、絹の古布をさいてはたきに再利用していた。たいていは古びた赤い色で「もみ」と呼んでいたのだが、それが布のことだけではなく、色(紅絹色)のことも指すと知ったのは、大人になってからである。

 〈紅絹色 支子(くちなし)の黄に紅花を重ねた、鮮やかな黄色がかった紅色〉

 『日本の色辞典』(吉岡幸雄著)にはそうあった。

 桃山時代から明治の初め頃まで、振り袖などの裏地には絹を紅で染めたものが用いられたそうだ。さらに驚いたのは「紅花が血液の循環をよくする」という。実際、染めるために紅花を扱っているとからだが温かくなってくるそうで、吉岡さんは「そのため昔の人は、肌に近い裏地や下着に紅絹を使用したのである」と書いている。

 植物が花や根などに蓄えた色で布を染め、身にまとうということは、その自然の生命力をもらっていることになるのかもしれない。

五色の紅葉

 今月3日、吉岡さんが愛してやまなかった京都・伏見の工房で葬儀が営まれ、参列者や供花が並ぶ様子に、幅広い交友ぶりがしのばれた。

 まもなく京都は紅葉の季節を迎える。その紅葉の色彩に、わずかな季節の変化すら敏感に感じ取れる日本人の感性があるということを、教えてくれたのも吉岡さんだ。

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