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「青山悟展」 機械と人間の関係は

「Faceless Labourers」2019 シルクスクリーンプリントに刺繍、ドローイング 撮影・宮島径 (c)AOYAMA Satoru, Courtesy of Mizuma Art Gallery
「Faceless Labourers」2019 シルクスクリーンプリントに刺繍、ドローイング 撮影・宮島径 (c)AOYAMA Satoru, Courtesy of Mizuma Art Gallery

 工業用ミシンを用いた刺繍(ししゅう)作品で高い評価を得ているアーティストの青山悟(さとる)の2年ぶりの個展が、ミヅマアートギャラリー(東京都新宿区)で開かれている。青山が紡ぎ出すカラフルな色彩模様は一見、絵のようだ。新作「Faceless Labourers」もそうだ。日本語で顔のない労働者といった意味。ひたむきにミシン仕事をして、アメリカをはじめ、さまざまな国旗が作られている。監視されているのか、頭上をドローンが飛び、なぜか人には顔がない。

 第一次大戦当時のアメリカの縫製工場の作業風景の写真を下敷きにした。図像を版画のシルクスクリーン技法により拡大。オリジナルには人物に顔もあったが、刷ったあとに削り落とされた。そこには個性もなく、ひたすら働く労働者の姿があり、人間が機械と化す社会への皮肉がにじむ。

 青山は昭和48年、東京生まれ。英国のゴールドスミス・カレッジのテキスタイルアート科を卒業した。同大学でシンガー社製の古いミシンに触れたことで刺繍作品の制作を始めた。

 映像作品も発表した。「孤独な労働者」といった意味の「The Lonely Labourer」という作品で、本展タイトルにもなっている。19世紀イギリスの詩人でデザイナー、ウィリアム・モリスのある手紙の文面から抽出した「消費」や「労働者」などの英語の言葉を、コンピューターミシンが自動的に刺繍するシーンを約11分間の映像に収めた。ミシン針の素早い動きとともに、瞬く間に文字が浮かび上がる。産業革命によって商品が大量生産される時代にあって、モリスは手仕事を重視した。同じ物を際限なく作り出す機械や効率化された労働によって、人間の精神が豊かで安らいでいるのか。無機的な映像からはそんなモリスの問いが発せられているかのようだ。

 テクノロジーや人工知能(AI)が進化するなかで失うものも多い。青山の作品はそんな現代社会をも見つめ直させてくれる。(渋沢和彦)

 11月2日まで、日・月・祝休、03・3268・2500。

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