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【ロングセラーを読む】『夜と霧』ヴィクトール・E・フランクル著

 ■収容所の真実から人間学ぶ

 言わずと知れた世界的なベストセラー。ユダヤ人精神科医で心理学者の著者フランクル氏(1905~97)が、第二次世界大戦中、ナチスによって強制収容所に収容された経験をもとに書かれた“体験記”だ。原著のタイトルは「ある心理学者の強制収容所体験」で、オーストリアで47(昭和22)年に出版された。

 日本語版タイトルの「夜と霧」はフランス人映画監督アラン・レネのドキュメンタリー映画に由来する。日本語版は、原著にはないナチスの残虐行為を赤裸々につづった解説と資料写真を加えて編集された初版(旧版)が昭和31年に、著者が新たに手を加えた52年の改訂版を新しく翻訳し直した「新版」が平成14年に、いずれもみすず書房から出版された。通常、新版が出ると旧版は書店から姿を消すが、同書の場合は旧版と新版で作りが異なることもあり両方がコンスタントに売れ続けているといい、新旧累計120万部超のロングセラーとなっている。

 みすず書房の守田省吾社長は「新版の刊行をきっかけに、新旧の翻訳どちらにもあらためて賛辞が寄せられ、どちらの版にも愛読者がいる。著者フランクル氏の意図をくんだのは新版だが、終戦から11年目に出た旧版は、当時の日本人に強制収容所で何が起きたかの真実を知らせた本として長く読み継がれている」と話す。

 約50の国・地域で出版されるが、主に売れているのは日本とアメリカで、英語版タイトルは「Man’s Search For Meaning(生きる意味を求めて)」。本の主題としてはこれが一番近く、最近は日本でも「人生論の本」として読まれているという。

 著者は「心理学者として」でなく、「ごくふつうの」被収容者が経験した収容所生活を書くことにこだわった。極限状況におかれたとき、人間がどういう行動をするのか。つぶさに観察した著者はこう結論する。「わたしたちは学ぶのだ。この世にはふたつの人間の種族がいる、いや、ふたつの種族しかいない、まともな人間とまともではない人間と、ということを」。果たして自分は、「まともな人間」でいられるだろうか。

 本書がこれからも読み継がれるべき作品であることは間違いない。

(みすず書房 旧版1800円+税/新版1500円+税)

平沢裕子

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