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【編集者のおすすめ】『絶声』下村敦史著 再読必至の相続ミステリー

 あと1時間半で莫大(ばくだい)な遺産が手に入る。失踪宣告の直前、7年以上も行方不明だった父のブログが急に更新を再開したところから物語は始まります。タイトルは『私はまだ生きている』。

 過去の罪、悔恨、怨嗟(えんさ)、贖罪(しょくざい)…家族の誰にも告げることなく失踪した資産家の父は、ブログの中では今までになく雄弁でした。後妻の子として冷遇され続け、なんとか一矢報いようとする主人公・大崎正好をあざ笑うかのように父の人間像は予想を大きく裏切り、果たして自分が憎しみを募らせていたのは、本当の姿なのか次第に戸惑いが生まれていきます。

 『闇に香る嘘』で江戸川乱歩賞を受賞して以来、『黙過』『刑事の慟哭(どうこく)』など精力的な執筆で読者を獲得し続けている著者の最新作は、衝撃のラスト&圧倒的リーダビリティの極上ミステリーです。

 読者は遺産相続の二転三転を共にし、クライマックスまで到達したところで、ずっと自分の手の内に大切な謎が握りしめられたことに気がつくことでしょう。特に物語の“ある部分”は再読必至。読み返していただくと、ラストの主人公の心境には、どこかすがすがしい救いが感じられるのではと思います。

 文芸誌での連載中から担当していましたが、単行本化にあたり、遺産相続や失踪に関する資料をさらに読み込み、また専門家に相談することで、より一層リアルで面白いミステリーとなりました。ぜひ、秋の夜長にご一読いただけましたら望外の光栄です。(集英社・1600円+税)

集英社文庫編集部 眞田尚子

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