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【話の肖像画】第31回世界文化賞受賞 歌舞伎俳優・坂東玉三郎(10)心を教えるのは難しい

 〈平成30年12月、歌舞伎界にとってひとつのエポックとなった舞台が上演された。東京・歌舞伎座の『壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)』。ヒロインの阿古屋(あこや)を演じる俳優は、阿古屋の心情になりきって、舞台で実際に、琴、三味線、胡弓(こきゅう)の三曲を演奏しなければならない。至難の役だ。それだけに昭和33年以降は、六代目中村歌右衛門さんと玉三郎さんしか演じる人はいなかった。その阿古屋に、玉三郎さんの指導を受け、若手女形の中村梅枝(ばいし)さんと中村児太郎(こたろう)さんが挑んだ〉

 実は、後輩の育成ということについて、お能の観世流宗家、観世清和さんともお話しするのですが、「なしくずし」に伝えていくというのがいいのではないかと。ご縁があった方になしくずしに、聞かれたことは隠さず答えていくということですね。

 どんなに力を入れて、この子に伝えようと思っても、なかなか伝わるものではありません。芸術というのは不思議なもので、直伝(じきでん)とか口伝(くでん)で教わったら形は伝わりますけれども、心が伝わるかというと、それはまた別の問題です。

 私が思うに、女形や舞台人が出現してくるときというのは、いつも「飛躍的」ではないでしょうか。突然出現してきた人が、何かを持っていて、魂なり、形なりを引き継いでいくということなのだと思います。パリのオペラ座のバレエの監督が、「うちでは踊りは教えられますけれども、踊りの心は教えることはできない」と言っているんですね。技術や形は教えられるけれども、一番肝心な心を教えることは難しい。持っている心を花開かせることはできるのでしょうけれども。

 ですから、後輩の女形にも私がものをお伝えするとき、自分がやったことをそのままおやりなさい、と言ったことは一度もないですね。私の研究はここまでです、ここからはあなた方が自分で研究してください、という思いでいつも話しています。形については言いますけれども、そこから先はあなた方の研究ですよと。 (聞き手 亀岡典子)

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