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【編集者のおすすめ】『アンジュと頭獅王』吉田修一著 意表をつく大冒険譚

『アンジュと頭獅王』吉田修一著
『アンジュと頭獅王』吉田修一著

 あの吉田修一が、なぜ今、古典の現代語訳に挑むことを選んだのか。その意図は実に著者らしいものでした。

 ある程度の豊かさを経験し、格差社会ともいわれる今日。自分が得たいものを得る喜びのその先にある喜びとは何なのか。時代を超えて本当に大切なものとは何かと考えたときに、文学として500年、1000年と残り続けている古典にその答えがあるのではないかと思い至った著者。古典のなかでも、中世の説経節が原典の『山椒太夫』にしたのは、七五調のリズムの面白さと、慈悲の尊さを謳(うた)いながらも「きちんと人間の残酷さが描かれている」ことが決め手でした。

 人買いにだまされた母親と姉弟は別々に売り飛ばされ、奴隷同然の日々を送ります。やがて弟を逃がしたあと拷問で命を絶たれる姉アンジュ。執拗(しつよう)な追っ手から逃れ逃れて時空を超えた頭獅王(ずしおう)は、令和の新宿へたどり着きます。再び宿敵の親子と対峙(たいじ)した頭獅王は、慈悲の心を果たして失わずにいられるのか-。

 物語の筋は生かしながらも、後半は意表をつくオリジナルの展開で、息をもつかせぬ大冒険譚はまさに古典エンターテインメント。著者の新境地と言えましょう。

 語る文学「説経節」の美しい言葉とリズムを意識した本作は、声に出して読むほうが、するすると気持ちよく物語が進んでいきます。装画を担当したヒグチユウコさんも「声に出して一気に読みました」。ぜひ、この心地よさを試していただきたいです。(小学館・1200円+税)

 小学館編集総務局 恩田裕子

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