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【ビブリオエッセー】「SF(すこしふしぎ)」の種 「ドラえもん」藤子・F・不二雄(小学館)

 22年前の春、小学校への入学を控えた私は生まれて初めて漫画を買ってもらった。その『ドラえもん』第45巻は、何度も開いたためボロボロになって、今も本棚に収まっている。

 当時の最新刊であり、てんとう虫コミックス『ドラえもん』の最終巻となった45巻には、「ガラパ星からきた男」という話が掲載されている。一話完結のドラえもんにおいて、唯一、連作形式で発表された異色の作品だ。

 SF映画のようなタイムパラドックスが展開されるこの話を、当時の私はまったく理解できなかった。大人でも時系列がわからなくなるようなややこしい話だ、漢字もルビがないと読めない幼稚園児に理解できるはずがない。それなのに、どうしてかこの話が気に入って、何もわからないくせにこの話を何度も何度も読み込んだ。

 それから歳月は流れ、今の私が読むものといえば、フィリップ・K・ディック、アーサー・C・クラーク、カート・ヴォネガット・ジュニアといった作家のSF小説ばかりになった。思えばあの『ドラえもん』第45巻が私に、「SF好きの種」を植え込んだのではないだろうか。

 来年2020年は、『ドラえもん』の連載開始から50周年を迎える。ドラえもんはこの50年の間、子供たちに夢を与えながら、こっそりと藤子・F・不二雄先生が仕込んだ「SF(すこしふしぎ)」の種を蒔(ま)いていっていたのかもしれない。

 徳島市 山口さゆり28

【ビブリオ・エッセー募集要項】本に関するエッセーを募集しています。応募作品のなかから、産経新聞スタッフが選定し、月~土曜日の夕刊1面に掲載しています。どうか「あなたの一冊」を教えてください。

 投稿はペンネーム可。600字程度で住所、氏名、年齢と電話番号を明記し、〒556-8661産経新聞「ビブリオエッセー」事務局まで。メールはbiblio@sankei.co.jp。題材となる本は流通している書籍に限り、絵本、漫画も含みます。採用の方のみ連絡、原稿は返却しません。二重投稿はお断りします。

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