PR

ライフ ライフ

【話の肖像画】第31回世界文化賞受賞 歌舞伎俳優・坂東玉三郎(69)(2)命懸けで女形を極める

前のニュース

世界文化賞の受賞者発表会見に臨む坂東玉三郎さん=東京都千代田区(宮崎瑞穂撮影)
世界文化賞の受賞者発表会見に臨む坂東玉三郎さん=東京都千代田区(宮崎瑞穂撮影)

 〈坂東玉三郎さんは、現代歌舞伎を代表する女形として活躍している。男性が女性に扮(ふん)し、演技をする女形。すらりとした姿態、清艶(せいえん)な色香、優美で繊細なしぐさ。玉三郎さんの女形の美しさには、見る人の心を震わせ、惑わせる力がある〉

 古代ギリシャ悲劇、16世紀から17世紀にかけてのイギリスのシェークスピア劇など、昔から、演劇のなかで男性が女性を演じるということは普通に行われていました。でも、なぜか現代では、アジアの一部の地域をのぞいて、日本にだけ残っている特殊な分野になりました。

 女形というのは大変不思議な役柄です。男でありながら女を演じるということなんですけれども、私は、究極、自分の体を使って、他人になる一つの作品というふうに考えています。

 でも、もっと突き詰めていくと、女優さんが演技で、ある女性像を作るときも、ただ、自分自身をそのまま使うだけではできないんじゃないでしょうか。

 自分をもう一回、細胞レベルに分解して組み立て直すことによって、演じる女性像を作り上げていく。そうして、女優という職掌が成り立っていく。そういう意味では、演じるということは、男優も女優も女形も同じだと思いますね。

 〈玉三郎さんの当たり役は数多い。謎のほほ笑みで田舎から江戸にやってきた男を破滅に追いやってしまう『籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)』の花魁(おいらん)・八ツ橋。女形の最高峰の役といわれる『伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)』の乳人(めのと)政岡(まさおか)。琴、三味線、胡弓(こきゅう)の3つの楽器を舞台で実際に弾かねばならないため、近年では長く玉三郎さんただひとりしか演じる人のいなかった『壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)』の阿古屋(あこや)…。ただ、外見の美しさだけではない、卓越した技量と深い解釈に基づいた高度な演技術で舞台に圧倒的な存在感を放つ〉

 大人の男が女になるのって、下手をすれば下品になりかねないものです。女形が不自然と思われないためには、細かい技術と大変な修練、そして何より品格が必要。女形を極めるということは、命懸けで取り組まないとできないことです。

 〈ある女形の歌舞伎俳優が、玉三郎さんと同じ舞台で共演したときのこと。花道から出てくる玉三郎さんの美しさに、「一瞬、自分の演技を忘れ、見ほれてしまった」と話していた〉

 先日、イスラム圏に旅に行ってきたのですけれども、昔は宮廷の演劇人は男性だったとうかがいました。

 演じるということは、かつては男性が中心だったけれど、近代になって女性もやることになったのかなと想像します。それなのに、日本の歌舞伎は、女形がはっきりと残った不思議な国だなあと思うのです。能楽も男性が能面をかけて女性を演じていますしね。

 〈なぜ、玉三郎さんのような女形が、現代に出現したのか。実は、玉三郎さんは歌舞伎の家の出身ではない。踊ることが大好きな一般の家庭に育った少年が歌舞伎の世界に入り、修練の末、能の大成者、世阿弥のいう『まことの花』を咲かせたのである〉(聞き手 亀岡典子)

次のニュース

関連トピックス

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ