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やけ酒、物価高と苦闘 サラリーマン武士の悲哀も 江戸東京博で「士 サムライ」展

幕末製造の青銅砲で、明治以降は東京に正午を知らせた午砲の実物
幕末製造の青銅砲で、明治以降は東京に正午を知らせた午砲の実物

 鎌倉時代から幕末まで、日本で約700年の長きにわたり続いた「武士の世」。それを担ったサムライたちは時代劇などでさまざまなイメージに描かれてきたが、実際にはどのような日常を過ごしていたのか。東京・両国の東京都江戸東京博物館で開かれている特別展「士 サムライ-天下太平を支えた人びと」は、江戸時代を中心とした武士たちの等身大の姿を描き出す。

 一口に江戸期の武士といっても、上は将軍から下は庶民との端境に位置する中間(ちゅうげん)まで、そのあり方は多様だ。特別展を担当した同館の田原昇学芸員は、武士身分の成立について「戦国時代以降の戦闘の中で、後方補給や輸送、救護も含めた戦闘集団が形成された。これが後に将軍家、大名家の『家中(かちゅう)』となり、そこにいた人たちがサムライと称されるようになった」と解説する。

 展示の目玉の一つである尾張徳川家の「陣備(じんそなえ)図」は、同家の軍団編制を構成員の一人一人の姿が分かる彩色画で書き込んだ計89帖(特別展では一部を展示)の巨大な図で、戦闘集団という大名家の本来の姿を具体的に示す資料だ。

 約200点の展示資料のうち、特に重点が置かれているのが絵や写真などの図像資料で、生身の人間としての武士がどういう生活を送り、どんな姿形をしていたかを示す。「久留米藩士江戸勤番長屋絵巻」は、大名屋敷内の長屋に住む江戸後期の武士たちの暮らしぶりを活写したユーモラスな絵巻。夏の日暮れに長屋前でうちわをあおいで夕涼みする姿や、燗酒(かんざけ)での酒宴、また突如幕命によって帰国が延期となったためやけ酒をあおって暴れる図など、物価が高い江戸で質素に暮らす地方武士たちの日常を温かく描く。

 時代が下って幕末になると、写真技術が登場する。1862年にロシア・サンクトペテルブルクで撮影された文久遣欧使節団員の肖像写真群はそれぞれきわめて鮮明かつ大判で、当時の上級武士の衣装の細部まではっきり確認できる貴重なもの。ほか、幕末期に製造された青銅製24ポンドカノン砲で、明治から昭和初期にかけては皇居内の江戸城本丸跡に設置され、午後0時に空砲を発射して東京に正午を知らせた「午砲」の実物や、「幕末三舟」として知られる勝海舟、高橋泥舟(でいしゅう)、山岡鉄舟の関係品など、歴史好きの興味をそそる品も多い。われわれが何となく抱いている武士のあいまいなイメージを、より具体的なものにしてくれる好企画だ。  (文化部 磨井慎吾)

 

 11月4日まで。月曜休(祝日の場合は開館し、翌火曜休)。一般1100円。問い合わせは同館03・3626・9974。

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