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【本ナビ+1】チャーミングな思考や言葉 クリエイティブディレクター・佐藤可士和

「モスクワの伯爵」
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 ■『モスクワの伯爵』エイモア・トールズ著、宇佐川晶子訳(早川書房・3600円+税)

 ロシア革命後の1922年、ボリシェヴィキの革命政府によって、それまで住んでいたモスクワ一の高級ホテル「メトロポール」での無期限の軟禁刑を下されたロストフ伯爵の約30年に及ぶホテル生活をつづった長編小説。ホテルを一歩出れば銃殺刑が待っていると言い渡され、豪華なスイートルームから埃(ほこり)の溜(た)まった屋根裏部屋へ。それでも決して人生を投げず、めげず、あきらめず、身の回りを整え、できる限りこれまで通りの生活を送ろうとする伯爵と、ホテル従業員や滞在客との交流と、そこで起こるさまざまな事件が描かれる。

 訳者あとがきによると、本書のゲラ刷りを読んだアメリカのベテラン編集者が「チャーミングな小説」と評したそうだ。確かに「チャーミング」という表現がぴったりな伯爵の思考や言葉には、示唆に富むものがたくさんある。

 たとえば、〈不運はさまざまな形をとってあらわれる、自分の境遇の主人とならなければ、その人間は一生境遇の奴隷となる〉。これは時代や環境が違う僕たちも、心に留めておきたいと思う言葉だ。

クリエイティブディレクター、佐藤可士和さん
クリエイティブディレクター、佐藤可士和さん
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 また、父親の仕事の関係でホテルに長期滞在する9歳の少女・ニーナに、彼女が憧れる「王女さま」のあり方について、伯爵はこう説く。〈前屈みの姿勢はともすれば怠惰な性格を暗示する、他者への無関心のあらわれでもある。伸びた姿勢は冷静さと、誠実な人柄を強調する〉。思わず僕も背筋を伸ばした。

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